【神羅学園フレンズダイアリー】
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●王子様を探せ!●
神羅学園は男子校である。 更に言えば、この界隈ではイケメン揃いと専らの噂でもあるのだ。 要するに何を言いたいかといえば、イケメン好きの女子がこの神羅学園に目をつけないわけがない、と言うことである。 そう、いわば彼らは――――――王子様。 恋に恋する乙女たちの心をきゅんとさせ、尚且つイケナイ大人女性の目の保養と妄想までをも包括するその凄まじき力は最早天賦の才…天晴れ、である。たぶん。 そんな彼女たちの中で専ら人気を競っている三人の人物がいた。 それは、神羅学園Aクラス在籍の三人で、一部熱狂的なファンの間では「視界エロリスト」とか「腰部直撃神ヴォイス」とか「ミッドナイト息子。」だとか「シャニーS」だとか呼ばれているイケメン三人衆である。 「やっぱりセフィロス様は正統派美形って感じで最高〜!」 「セフィロスとか古くない?今の時代ヴァイスだし」 「そんな肉体派ヤダ!やっぱり繊細なジェネシス様でしょ」 そう…人気を三分しているのは、セフィロス、ジェネシス、ヴァイスの三人。 この三人、確かに顔も良いし実力もある。その上、神羅学園内でも一目置かれている存在なのだ。セフィロスに至っては本来Sクラスの実力の持ち主なのだからそれも当然だろう。 こういう噂というのは自然と耳に入ってくるものである。 勿論、三人の耳にも例外なく入ってくるわけで…。 しかし渦中の三人はこの人気について特に何も気にしていないらしく、いつもと変わりなく過ごしている。むしろ周囲の方が、関係ないくせに過剰反応していた。 ―――――例えば此処にも一人。 「おいおいおい!毎年不動だったセフィロス人気が今年はヤバそうだって専らの噂だぜ!どうすんだよ、セフィロス!?」 「そんなものは関係ない」 「駄目だって!ジェネシスならまだしもヴァイスだぜ!?ヴァイス急上昇だって!どーするよ!?」 「どーもするか、この阿呆が」 はあ、とため息をついたセフィロスは、折角のサボリタイムにザックスが怒鳴り込んできたもんだから、かなり不機嫌になってそう切り替えした。 学校の屋上はセフィロスのサボリ専用スポットであり、常日頃からセフィロスがサボりを堪能するために存在している。も同様である。そんな快適サボリライフを邪魔されたセフィロスとしては、そんなことはどうでも良いから早いところ退散しろ、という気分だった。 しかし、なんと言ってもザックスは熱い男である。 かの宿敵ヴァイスにセフィロスが負けるんではないかと思うと、もう気が気ではなかったのだ。嗚呼、何と熱い友情であらうか。 「だってセフィロス、ヴァイスなんか鼻持ちならねえって言ってたじゃん!駄目だろ、負けちゃ!」 「それは三年前の話だろう?もうどうでも良い、面倒だしな」 「マジかよ〜!?」 セフィロスはやれやれ、ともう一度重いため息をつくと、気分を害したといわんばかりにサボりスポットである屋上を後にしようとする。それに気付いたザックスは、大慌てでセフィロスについていった。 …と、こんなふうに、本人は気にしてなくても周囲が放っておかないという状況がままあるのが彼らの悩みの種である。勿論これはセフィロスに限ったことじゃなく、ジェネシスもヴァイスも同じだった。何故だか周囲の人間が、勝手に相手を目の敵にしているのである。これは正に困った事態だろう。 そこである日、困りに困り果てた三人は考えたのである。 周囲からすれば正に敵同士である三人がこっそりと集まって、緊急会議を開いたのだ。議題は勿論、この事態の収拾について、である。 誰にも見つからないようにと変装までしてやってきた三人は、ニット帽を深く被り、サングラスをし、大型マスクをつけていた。まるで芸能人だ。いやむしろ泥棒だ。 「…とにかく事態の収拾を早くしたい」 「確かに。しかしその為にはランクをつけるしかない」 「じゃあどういう順番にする?」 ごにょごにょごにょ… 話し合ってみる。 …が。 「おい、ちょっと待て。よりにもよって俺がラストとはどういった了見だ。ソレは無い、断じて無い、在り得ない、よって不可」 「じゃあ誰が最下位になるというんだ?俺は断るぞ」 「待て、俺も断る。そんな不名誉なことがこの世にあってたまるか」 心の底では負けなくない精神旺盛である三人は、いざ最下位となるとそれは遠慮申し上げたい所存だった。しかしそれではランクは付かない。ランクがつかなければ事態は収拾しない。 「いかん、これでは決まらんな。そもそも誰が俺たちを引き合いに出したんだ」 「近くの女子校だろう、良く生徒を見かけるしな」 「それにしても良く俺たちの情報を掴んだものだな。もしやスパイがいるのか?」 ―――――――THE・スパイ。 その言葉に三人は顔を見合わせた。今迄考え付かなかったその設定…在り得ないとも限らない線である。 もしどこかにスパイがいて、ソイツが女性陣に情報を売っているとしたら…。 「プライバシーの侵害だ!訴えてやる!」 ―――――というのは残念ながら諦めて頂くしかない。 問題はそこではない。そこではなくて、その先である。 「では提案といこうか。まず、そのスパイを見つけ出すことが先決だが」 三人の中で一番インテリなジェネシスが、にやりと笑いながらあることを提案し始めた。それはスパイを逆手にとって情報操作しようというかくも卑怯…いや、素晴らしい作戦である。いわば、根っこから汚れを削ぎ落とす有能洗剤的作戦だ。 「今の俺たちはいわば犠牲者。犠牲者が増えれば増えるほど一固体に対する圧力は分散、緩和される。つまり――」 「うむ。“赤信号みんなで渡れば怖くない作戦”というわけだな」 「…というかそのネーミングセンスはどうにかならないのか、セフィロス?」 「俺を馬鹿にするつもりか、ジェネシス」 バチバチと火花の散る二人の間を、まあまあ、とヴァイスが割って入る。 世間ではセフィロスとヴァイスが競い合っているという専らの噂だが、実際にはセフィロスとジェネシスの小競り合いの方がよっぽど多いのである。皆はそれをさっぱりと知らないのだ。 「とにかくジェネシスの案で行こう。まずはスパイ探しだが、俺に良い考えがある。その為には学園一のアイドルを借り出す必要があるな」 「アイドル???」 ヴァイスの言葉に、セフィロスとジェネシスが同時に首を45度右に傾ける。 それに対して、ヴァイスは自信満々の笑みで一つ頷いたのだった。
くどいようだが、神羅学園は男子校である。 その男子校でアイドルを称するとなると、それは自ずと危険領域であることがご理解いただけよう。 さて、ではジェネシスの言うところのアイドルとは何ぞや?ということなのだが、その答えは意外にも近くに転がっていたのである。 「いや〜可愛いなあ。俺マジ惚れたわ〜」 「ああ、思ったより下半身にクるな」 放課後の教室。 そこで、ザックスとセフィロスが嫌らしい目つきをしながら、ジロジロとある物体を眺めていた。その物体とは…そう、人である。しかもその人というのは…。 「……ちょっと待て。何でこうなるんだよっ!!」 ―――――クラウドだった。 その問題のクラウドといえば、ジェネシスがどこからか調達してきた女子校の制服を強制的に着させられていた。まるで着せ替え人形だ。 「いや〜ちょっとマジ俺ヤバイわ。ちょっと触っても良い?」 「はあ!?何言って…って馬鹿!なに本当に触ってんだよ、ザックス!!」 「スカートの中はワンダーランド…」 「ってアホかああ!!!」 クラウドがすかさずツッこんだのは言うまでもない。 「全くお前は阿呆だな、ザックス。触るなどという馬鹿げたことをするなんて…」 心底呆れたふうにそう言ったセフィロスに、クラウドはうんうん、と思いっきり首を縦に振る。 が、しかし。 「良いか、正しくはこうだ。触る前に押し倒す!!」 「ぎゃああああ〜!!!」 「あー!ズルイぞ、セフィロス!俺もやりてえ!」 …もうメチャクチャである。 まあともかく、突然女子校の制服を強制的に着させられたクラウドとしては、このちんぷんかんぷんな状況を把握したいというのが第一の願いだった。じゃなければこのコスプレ状態の自分があまりにも報われないではないか。 そんなわけで、放課後の教室ではセフィロスによる壮大な作戦が打ち明けられたのだった。それはジェネシス案であり、クラウドに協力してもらおうという点に関してはヴァイスの案である。要するにセフィロスはまるで提案に関わっていないわけだが、その説明をする際には実に実に神妙に話をした。 「…というわけで、お前は女子校生に扮してこの学園内のスパイに接触する。そして新たな王子候補をお前の方から提案するんだ。するとスパイは、いつものようにその情報を学園内に蔓延させる。“女子校生の間ではアイツが人気らしい”だとかなんだとか…まあそういう作戦だ。分かったな?」 「はあ、まあ…」 クラウドはそう頷きながらも、だからってどうして自分がこの役をやらねばならないのだろうと疑問で仕方なかったものである。しかしそこはつっこまないでおく。 そんなクラウドの隣で、ザックスがうーん、と唸った。 「でもよ、セフィロス。それだと人気が分散しちゃうじゃん。そしたらセフィロスまで人気落ちちまう可能性だってあんじゃねえか?」 「俺はどうでも良い。とにかく面倒なことは御免なだけだ」 「じゃあヴァイスが勝っても良いのかよ」 「まあ最悪そういうこともあるだろうが、それもどうでも良い」 まさかこの作戦がセフィロス、ジェネシス、ヴァイスの三人によって立てられたものだとは思いもしていないザックスは、でも、だとか、やっぱり、だとかブツブツ言っている。それをサクッと無視したセフィロスは、クラウドを向き返り、真剣な顔をしてこう言った。 「俺の為にやってくれ。――頼む」 「え、あ…う、うん…」 忘れるなかれ、セフィロスは乙女たちの王子様として名を馳せる男なのである。 そんなセフィロスに、真面目に見つめられながら頼まれごとなどされたら、さすがにクラウドもドキッとしてしまう。何せセフィロスは男からも人気があるほどなのだ。 「セフィロスってやっぱりカッコイイんだね」 思わずそう漏らしてしまった言葉を、セフィロスは聞き逃していなかったらしい。ニヤニヤと笑って、 「作戦が終わったらその格好のまま俺の所に来い、クラウド」 なんて言った。 それを聞いて、絶対いくもんか、と心に誓うクラウドなのだった。
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