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小さな約束

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七番街プレートが落ちる―――。

それは神羅の陰謀だった。

その為にティファとクラウドは神羅に潜り込むと言い、エアリスは結局、バレットの娘であるマリンを任された。

本当は一緒に行きたかったな、とエアリスはマリンの手を引きながら思っていた。

「巻き込みたくない」そう言うクラウドは、ティファには信頼を置いているように思える。

つい最近出会ったばかりのエアリスをそう言うのは分かる。けれど、やはりそれは少しばかりの寂しさを連れてきた。

でも―――。

今、出来る事。それはこの小さな手を守る事。

それだけだった。

 

 

 

自宅までマリンを連れ帰り、エアリスはマリンに焼き菓子を作ってやった。

「もう安心よ」

そう言って焼き菓子を渡しながらエアリスは笑う。

「父ちゃんは?」

そう不安そうな声を出すマリンに、エアリスは優しく言ってやる。

「お父さんは今、お仕事してるの。マリンちゃんはいつもみたいに待ってれば良いのよ」

それでも不安そうにしているマリンに、エアリスは父親の事を聞いた。

「ねえ、どんな人?お父さんって」

マリンはぱっ、と顔を明るくさせて腕を大きく広げながら話し始めた。

「あのね、カッコイイの!ツヨいの!スゴいの!」

「そっか〜」

うふふ、とエアリスは笑う。

その無邪気さが心を軽くさせるように思えた。

「ね、じゃあ…ティファ―――さん、は?」

ちょっと考えてからそう続ける。

マリンはまた嬉しそうに「ティファはね〜」と得意げな顔をした。

「お料理がとっても上手なんだよー!ヤサしいしね、マリンはダイスキだよ」

「お料理が上手かあ…」

確かに店をやっているなら、それもそうかなあと思う。

ふと、今さっき自分が作った焼き菓子の事を考えて、エアリスは「う〜ん」と唸る。

「ねね、じゃあね。さっきのお菓子と、ティファさんのお料理。どっちがおいしい?」

ちょっとドキドキした。

しかしマリンはまたも無邪気にこう言ったのだった。

「ティファ!」

その答えを聞いてエアリスはぷっくり膨れながら、

「も〜!この正直者〜!」

とマリンの頬を両手で撫でる。えへへ、と笑うマリンは、目前のエアリス―――マリンにとっては見知らぬ女性である彼女に、こう耳打ちした。

「あのね、ティファの秘密、知ってるの」

「えっ、なになに〜?」

マリンと同じ具合にはしゃぎながら、エアリスは耳を寄せる。

「ティファ、クラウドのこと好きなんだよー」

ドキッ、とした。

少し、反応に困ってしまう。

けど―――。

分かってることだけどね、と心の中でエアリスは納得をする。

「そうよねークラウドと仲良いもんね。幼馴染―――…だっけ?でもきっと両想いなんだろうなあ」

ちょっと良いな―――そう思ったのは、あの時と一緒だった。

あの特殊な目の輝き。

あの強さと冷静さ、その奥に眠っている優しさ。

あの時と、一緒―――。

「ね。クラウドって…どんな人?」

記憶の中にある初恋の人の影に、クラウドが重なる中、エアリスはそんなことを聞く。

「クラウドぉ?」

マリンはさっきとは正反対にきょとん、とした。

「クラウドはねえ、マリンにお花くれたの」

「え?お花?」

ミッドガルでは花は咲かない。

思い当たるのは、自分が売った、あの花だけだった。

ティファの存在を知った時、エアリスは思ったのだ。

――――あの花はきっとティファに渡したんだろう、と。

けれどクラウドは。

“ただの幼馴染だ。そんなんじゃない”

そう言っていたクラウドが思い出される。

それでもきっと二人は想い合っているのだと、エアリスは思っていた。

「そっかー。クラウドって優しいね」

笑ってそう言うエアリスに、マリンは言う。

「でもね、いつもムスーっとしてるの。父ちゃんは良く怒ってるしね、ティファにだってあんまり笑ったりしないの。だけどマリンにお花くれたし、ホントはヤサしいんだよー!マリン、ちょっと好きなの」

「あははは」

小さなライバルだね、とエアリスは面白がる。

「クラウドとは、ずっと一緒だったの?」

ふとそんな事を聞くエアリスに、マリンは「違うよ」と答えた。

「ちょっと前にね、お店、来たの。ティファ、喜んでたよ」

確か名前は―――セブンスヘブン。

そうか、クラウドとティファは再会したんだ、とエアリスは頷く。

全く良いシチュエーションだなあ、と思う。

「ねえ、クラウドは…」

「お姉ちゃん」

「エアリスっていうのよ、私」

「じゃあ〜、エアリス!エアリス、クラウドのことばっか聞くねー」

「えっ」

そういえば、いつの間にかクラウドの事ばかり聞いている自分がいることに気付く。

当のクラウドは戦いの最中だというのに――。

少し後悔と…恥ずかしさを覚える。

「ねーエアリスは、クラウドのこと好きなのぉ?」

幼いながらにそんな事を聞いてニヤニヤしているマリンに、エアリスは「もうっ!」と膨れる。

「それはヒミツ!」

人差し指を立てて、片目を瞑る。

まだ口に出せない―――。

だって、自分の心が分からないから。

ミッドガルで花を買ってくれたクラウド。

“花なんて珍しいな。もらうよ”

無表情だったけれど、その行動自体が優しさだった。

まるであの時と一緒だったのだ―――それは。

 

 

ソルジャーと一目で分かるその格好でその人は、やはりエアリスから花を買ってくれた。

“へえ、花か。良いもんだな。一つもらうよ”

“ありがとう”

“でも残念だな。俺には花を贈るような相手もいないし”

“嘘。いるんでしょ、彼女?”

“いないよ。――そうだ、君にプレゼントしようかな?”

“え?嬉しいけど…でもそれって何か、変”

“それもそうだ”

そう言って笑ってた、あの人。

全然態度は違うのに…それでも重なる。

「あの人」と「クラウド」―――。

 

 

ふとマリンの顔を覗き込んだエアリスは、うふふと笑いながら額をコツン、とつけた。

「―――ね。これはヒミツよ。女の子の約束!」

それは、今はまだ言えない想いだったから。

 

 

END

 

 

 

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