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女のコの特権
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何とも思ってない。
何とも思ってない。
私たちは仲間だから。
何てこと無い、仲間として傍にいるだけ。
そうだよね…?
「大変そうだな、手伝おうか」
買い出し係の私にそう声をかけてきたのはクラウド。
私は今日は買い出し担当だから、皆を残して一人だけ道具屋に来てたけど、クラウドったら何時の間にか付いてきてたみたい。
ちょっと意外だな、そんなことするなんて。
でもね、私はそういう意外なクラウドって嫌いじゃないんだ。ちょっと見じゃ恐そうに見えるクラウドがそういう一面を見せてくれるってことが、返って嬉しいなあってそう思うから。
「ほんとに?ありがとっ」
取り敢えず私、どっさりあった荷物をクラウドに押しつけちゃった。
そのおかげで私の両手は空になってその代わりクラウドの片手はふさがって…でもね、こういう時悔しいなあって思っちゃうの。男の人ってひょいってやってのけちゃうから。
私なんかが時間かけてるようなこと、クラウドはものの数秒で、しかも普通の顔したままで済ませちゃうの。
だからね、こういうのは女の子の特権。
そーいう特権はちゃんとつかわなきゃ。
「なーんか助かっちゃったなあ。クラウドって優しいね」
「…別に」
ぶっきらぼうな態度のまま、クラウドは私の前を歩いていく。私はその後ろを小さくついていってた。
だから私が何か話し掛けるたびにクラウドは後ろを振り返ることになって、何だか私はそれ見てるのが楽しくなっちゃったのね。だってクラウドったら話し掛けるたびにちゃんと振り返ってくれるのに、 その後はちゃんと元通り私の前を歩くんだもの。
何かね、ちょっと思ったの。
…悔しいな、って。
「ねえクラウド〜」
「ん?」
皆のところまで後少しって時になって、私は最後の呼び掛けをした。
クラウドはやっぱり振り返って私を見て…それから、私と話す為に少し腰をおしてそう聞き返す。
私はね、そんなクラウドににっこり笑った。
「クラウドは女の子だったらダレにでも優しくする?」
「え?」
「だってね、いっつもクラウドってちょっとクールじゃない?でもこうして二人でいると何か違うんだもん」
ちょっと言葉を選んでそう言うと、クラウドは真面目な顔して黙りこんじゃった。
別に困らせるつもりなんてなかったんだけどな。
それとも…答えにくいことだったのかな。
もし答えにくいなら私、どうリアクションするべきか考えなきゃだね。喜んでいいのか悪いのか、そういうとこを見極めてね。
「―――どうかな。分からない」
結局最後にクラウドがくれた言葉はそれだった。
―――分からない、か。
でもね、じゃあクラウド。
こう言ったらどうなるかな?
「じゃあ…もし今日の買い出し担当がバレットだったら、ついてきて荷物持ってくれてた?」
悪戯してるみたいに笑いながらそう言うと、クラウドったら今度は即答なんかするんだ。
「行くわけ無いだろ。オレが荷物持つ必要もないさ、バレットなら」
「ふうん…じゃあやっぱ女の子だから優しくしてくれてるって事なんだ〜?」
そんなふうに私が言うと、クラウドはどうして良いか分からないって顔をした。まあそうだよね。だって今のクラウドったら、私の誘導尋問に引っかかったんだもん。
ね、でもね「そうだ」って言っても良いんだよ。
それはそれで嬉しいんだ、私は。そう言われたら私は、自分が女の子だってこと、すごく喜べば良いだけなの。
「…別に」
クラウドはそっぽを向いてそう言うと、行くぞ、なんて言ってまた歩き出した。クラウドは、ちゃんとは答えたくないみたい。
本当はね、聞いてみたかったんだ。クラウドが「違う」って言ってたら、聞いてみたかったの。
"じゃあ他に理由があるんだ?"って。
それは…それはちょっと期待しちゃってるんだって、私も分かってるけど…でも聞いてみたかったなあ。でももう無理だよね。だって私の目の前にはクラウドの背中が見えてる。もうすぐで皆の所に戻っちゃうし、そうしたら今みたいに二人きりで話すなんて滅多にできないもの。
「クラウド」
私はクラウドの背中を見つめながら、クラウドの名前を無意識に呼んでた。それは無意識だったけど、クラウドはそれに反応してまた振り返ってくれる。
「何だ?」
さっきの会話があったからなのか、クラウドったら真面目な顔しちゃってる。その顔見て、思わずドキッとしちゃったりしたけど、私はいつの間にか笑ってた。
「あのね…さっきの話なんだけど…もしも――――――」
「…もしも?」
さっきの続きだって知ってクラウドはちょっと構えた感じだったけど、でもそう聞き返してくる。それはちゃんと内容を聞こうとしてくれてるって事だったんだけど、でもね、でも…何だか、私は言葉に詰まっちゃった。
――――――――――――こんなこと、多分、聞いちゃいけないんだ。
そう思ったら、口が止まっちゃったの。
「どうしたんだ、エアリス?」
そう聞かれても、何も言えなかった。
私はただクラウドの事見てた。
じっと見つめてた。
クラウドは……そんな私を真っ直ぐ見てくれてた。
何だかね、そのとき私、時間が止まったみたいだって、そう思ってた。ううん、このまま止まっちゃえば良いのにって、そう思ってたのかもしれない。
だってこんなふうに見つめあってると、何だかとってもね……。
とっても、幸せな気分になるんだよ、クラウド。
「エアリス、クラウド―――――っ!!!!」
私とクラウドが無言で見詰め合ってる時間は、そうそう長くは続かなかった。そうだよね、仕方ないんだ。だって皆のところまではもうすぐで、皆からも私達が見えてたんだもん。
だから、そう呼ばれても仕方なかったの。
「皆が呼んでる。行こう、エアリス」
「…うん、そうだね」
だから私、結局何も言わないままにクラウドと一緒に皆の所に戻ることになっちゃった。
馬鹿だなあ、ちゃんと言えばよかったのに。
でもできなかったんだから仕方無いよね。それにそれは言っちゃいけない言葉だったんだからこうなって当然。正解って感じ。
私は皆の元に戻って、いつも通り笑ってた。
私の前を歩いてたクラウドはいつの間にか側からいなくなってて、気付いたらティファの側にいたの。私はね、それを見てやっぱり…やっぱり笑ってたんだ。
―――――――言わなくて良かったよね、やっぱ。
私が最後に聞いてみたかったのはね、クラウド。もしも…もしもね。
"買出しに行くのがティファだったら、やっぱり付いていって荷物を持ってくれてた?"
でも私はその答えなんてとっくに知ってたんだよ。
「優しいね、クラウド」
クラウドはきっとそう聞いても何も答えなかったと思うけど、でもその答えは絶対イエスなの。今私の目に映ってるティファとクラウドを見てればね、そういう事って分かっちゃうの。
だから私は心でこう唱えるんだ。
何とも思ってない。
何とも思ってない。
私たちは仲間だから。
何てこと無い、仲間として傍にいるだけ。
そう、唱えるの。
クラウドは女の子には優しいから、だから私は女の子で良かったなあって、そう思えば良いんだ。例え私が思ってることを告げられなくても、そう思ってれば私はあったかくなれるの。
ティファ、ごめんね。
私多分、クラウドには女の子の特権いっぱい使っちゃうよ。でもそれはそれだけの特権なんだ。それ以上何も言えないから、何もできないから、私はそれを使っちゃうんだと思うんだ。
だから許してね。
買出し係りになった時だけ――――――たったそれだけで良いんだ。そういう時間だけ、ちょっとだけ、幸せだなあって思わせてね。
それだけで良いから。
笑ってるティファとクールなクラウド。
それを見てちょっとだけ嬉しくなるような私を…
ごめんね、
許してね。
だってね、それは――――――私だけの特権。私だけの秘密だから。
END
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