俺色

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高尚クラシックにガラスの置物。

スプリングの利いたベットに床暖房絨毯。

壁にはどっかのお偉いさんの超高級絵画。

どこをとっても超一流。

まったく反吐が出るってこういう事。

俺はすぐさま改装開始。

こんなんじゃ落ち着きゃしないんだぞ、っと。

改装BGMに高尚クラシックは似合わない。ってな訳で俺はすぐさまCDチェンジ。

俺のオススメBGMはヘビーでクレイジーなコテコテハードロック。これでいかにも俺色。

ガラスの置物は箱に詰めて押入れ直行。さて後ガマは何にする?

モチロン皮が剥げちゃったガイコツ君。これはもう超クレイジー且つ超最上級。

スプリングの利いたベットは活用できるから残しておくんだぞ、っと。まあこれは常識、ってね。

壁のお偉いさんは残念ながら降格。この世は厳しい弱肉強食世界、こんなのもアリ。だから俺はソイツに両手合わせて“ご愁傷様”。

さて、まっさらになっちまった壁に、次にやってきたのは超凡人のレノ君とその恋人。写真を一枚づつ画鋲で刺して、一面アルバム状態。

おめでとう昇格、俺はやっぱり両手合わせてそう言ってやる。モチロンこれは俺と俺の恋人に向けて。

さて、改装終了。

これでやっと俺は落ち着くって訳。ガンガンハードなBGMは身体に心地良い重低音を響かせて頭を痺れさせる。

そんな最高な空間で、最高の恋人と抱き合えたら、それこそ超高級ってね。

ほら、俺は間違えてない。

さっきまで憂鬱BGMでうつらうつらしてた俺のハニー君、ガンガンロックでようやくお目覚め。ちょっとくらい心臓がビックリしても大丈夫、そのくらい俺が面倒見てやるし?

「…レノ…おはよ…」

眠気眼でそう言う恋人に、俺はしゃがみこんで「よう」と声をかけた。

うんうん、寝起きは可愛いね。いやいや、いつも美人サンだけどこういう時は更にそう思うんだぞ、っと。

やっとお目覚めの恋人は、起きざまに何だか妙な顔をし出した。どうも流れてるBGMに不信感でも持ったみたいだ。

まあまあ、そんな顔を顰めんなって。これが俺流なんだし。

「…何だこの音楽」

「何ってことも無いんだぞ、っと。快適だろ?」

「…どこが快適なんだっ」

ようやっとパッチリ目を開けた恋人、世間では副社長と呼ばれてるルーファウスは、突然のようにガバッと立ち上がる。

それから部屋を見回して――――――……はいはい、物色スタート。

俺は焦ってるルーファウス副社長を見ながらニヤニヤ笑ってる。だってこれは面白い。いっつもそこそこデンと構えてるルー様、俺の前ではあられもなく100%焦りまくり。

なになに、置物が無いって?

そりゃそうだ。ガラスの置物はもう、狭い押入れの中。

それから壁のお偉いさんはどこかって?

ああそれはもう残念なことに、クビ。今は俺らがトップスターって訳。

「レノ!何てことしてくれたんだっ!!」

一通り確認なんかし終えた後、ルー様は怒りMAXでそう声を荒げた。顔なんか鬼の如く、ああ恐い。

「そんなに怒る事無いんだぞ、っと。これでこそ落ち着くんだから」

「落ち着くって…それはお前だけだろう!」

いやいや、それはどっこい違うんだぞ、っと。というより、アレだ。これから違うようになるんだよな、ハニー?

俺はあらかじめ買ってあったビールを開けると、それをプシューと音を立てて開ける。

モチロン、缶は二つ。一つは俺、一つは愛しの君に。

副社長、その缶を見つめつつ呆然としてる。

なに、理由くらいお見通し。つまりはアレだ、缶に密閉されたビールなんぞ飲めないってな事だ。

でもまあ考えてもみろって。

一般庶民、天国行きのチープドラッグだと考えりゃ、それもまだオイシイ話。ワンコインで飛べるならそれ程良い話もない。

「じゃ、乾杯〜っ!」

俺はチャリンなんて上品な音を立てないアルミ缶を、コツン、と当ててニッと笑った。

副社長は相変わらず、変てこな顔をしてたけど。

 

 

 

数日経って、俺は副社長様の秘密のお部屋に呼び出された。一人っきりの快適空間、専ら羨ましい限り。

で、そこで何が起こるって、そりゃ甘い話――――――…って事にはならないトコに涙。

そうそう、分かってる。

それってばいわゆる“お説教”ってヤツ。

呼び出されて出向いた部屋の中、俺の目の前で憂鬱そうにして紙っぺらを眺めてる副社長は、

「お前な…」

なんて言ってる。

何がご不満、俺のハニー?

「ツォンは甘すぎるようだ。この評価はほとほと…甘すぎるッ!!」

そう言って紙っぺらOPEN。

ああ、そう。

それっていわゆるアレ、人が人を評価するってクソシステムの賜物。仕事がどーの、態度がどーのっていうアレだ。アルファベット君大活躍の紙を見て、俺は感心してニッと笑う。

そう、ツォンさんは甘いな。そのアルファベットが天下のAの羅列を作ってるあたり、これは副社長も首を捻らざるを得ないってワケだ。

特にオカシイのは“素行”だとかいうトコ。

でもソレって何って聞きたいね。表現の自由って今じゃ風化しちまったのかってね。

「まーまー良いでしょ。ツォンさんがそう思ってるんだから。俺は良い部下なんだぞ、っと」

俺はニッと笑ってそう言ってやった。

でもまだ我が恋人……いやいや副社長殿は意にそぐわないご様子。ってな訳で一つ、提案。

「じゃ、さ。こうしようか。副社長が評価し直すのもアリなんだぞ、っと」

「そんなことしたら、それこそお前、クビだ」

ありゃりゃ、俺はそこまで駄目人間なのかな、っと。こりゃちょっと残念。……訂正、大分残念。

でも、そんな俺でもドウよ?

愛しの恋人には超がつくほど優男に大変身。そうじゃないかな?

「でもアレだ。じゃあ、どう?副社長の恋人的評価としては?」

これでも同じ結果だなんて言ったら俺は大パニック、これでも愛ってヤツは本物なんだけど。俺の言葉に副社長は、さもイヤ〜そうな顔してる。そんなにイヤそうにしないで欲しいけどな、これも残念。

しかし、だ。暫くするとその評価ってヤツは下ったわけ。

そしてこれがその評価の結果。

「50点だな」

「ごっ、ごじゅ…」

俺はハッキリ言って派手に肩を落とした。オイオイ、今度は点数式かよ?

「そらモチロン、アレでしょ。50点満点中?」

「馬鹿、違う。100点満点中だ」

……だってさ。って事はナニ、俺って半分?

その100%取れるヤツ、どこらに居るんだかってのが気になるね。

俺は副社長に即刻、抗議。だってそりゃ俺の頑張りも評価して貰わないと。

「そりゃ酷いんだぞ、っと。俺にとっては100点なのにさー…っていうか平均点も取れてないし」

平均点は60点と相場が決まってる。

でもそんな俺に向かってハニーは一言。

「平均以下って事じゃないか?」

が――――ん。

マジかよ。

「じゃあ聞くけど平均以上取れるヤツ、いんの?」

「さあ…。仮に居たとしてもお前には教えない。だってお前、ヤバい事しそうだし」

「アレ。何でバレたのかな、っと?」

そんな分かりきってることバレるも何も無いとか言いながら副社長、大いに溜息。

そうか、ナルホド。俺ってば危険な男って訳。

工事現場の頭上注意の上の方には俺の一撃が待ち構えてるって、な・

まあ確かにそうだ。

そんな奴いたら、俺はぶっ飛ばすね。モトイ、息の根止めてやっちゃう?

人のモンたぶらかすのはタブー。天上は俺、天下も俺。つまり他人は排除。俺が50点ならそれもまあ良いけど、その変わりこの副社長の心は0〜50までしか移動不可。ってな訳で。

副社長は溜息をつきつつ、書類をデスクの上にポンと置く。それから…ちょっと方向転換。

此処から先はプライベートの領域。

「ところでな…お前、この前……俺の部屋、滅茶苦茶にしてくれたな」

それは当然、この間の改装の話だ。

「滅茶苦茶とは失礼なんだぞ、っと。アレは俺流アレンジ」

「アレンジでも何でも良いがな、とにかく!もう全部元に戻したからな!」

なに、元に戻しちゃった。これは残念。

じゃ今頃はやっぱ高尚クラシック響くお部屋ってわけ?

「今後はああいうこと、するな」

副社長はそうして、副社長としてなのかハニーとしてなのか分からない命令を下す。

あーいう事って何さ?

全然悪いことじゃない。むしろ歓迎して欲しいくらい。

だって俺流アイの表現とそれも一緒。だろ?

でもハニーはもうその話にもピリオドを打ったみたいに手をヒラヒラやりながら、ハニーに集る俺を追っ払おうとしてる。

はいはい、OK。悲しいけど俺はここらで退散。俺の愛しのハニーのご機嫌損ねんのは、そりゃ俺だってお手上げゴメン状態。

ってな訳で紳士な俺は華麗に挨拶、“また次の機会に会いましょう”。

「じゃ、な」

「ああ、また」

そんなこんなで説教タイムはジ・エンド。まあ俺にはスウィートタイムとかわらなかったけど。

ハニーと居れりゃ俺は楽園、でもって独りはそれはそれで楽園。

何でかって?

そりゃハニー、俺はいつでもギリギリいっぱい、心はぶっ飛んでるからだってな。

だから、さ。

――――――答えは、NO。

これが何の答えかっていえば、さっきの副社長の言葉への答え。そうそう、あーいう事するな、ってな俺流否定へのな。起き上がりコブシも真っ青な俺の根性、見せてやろうか?

愛は、一筋縄じゃいきません、ってね。

 

 

 

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