OK!GO!

-----------------------------------------------

 

 

 

柄にもない「おまじない」。

それでもコイツは、俺にとっちゃ捨てられないハイグレード。

 

 

 

気ままな俺の一日を覗きたいって?

ま、そうだな。じゃあ俺の「おまじない」は秘密ってコトで。ソレ鉄則。

俺には一日一日頑張ってく為のハイグレードな「おまじない」がある。っていっても間違えんなよ、これはそんじょそこらの嘘臭いマジナイとは違うんだぞ、っと。

じゃあ何かって?

それは俺の一日を覗けば一発了解なコト。ソイツはいっつも俺のポケットの中でぐっすりお休み中で、俺はそこにソイツがいるから頑張れる。ま、「おまじない」っていうより「お守り」って方が近いかも。

とにかく俺は、ポケットにソイツを入れ込んで、毎日元気に出勤ときてる。

だけどな、たまには俺だってヘコむコトもあるわけだ。それがどーいう時かっていうと、惚れてるヤツがつれない時とか、惚れてるヤツが落ち込んでる時とか、惚れてるヤツが悲しそーな時とか…――――って、全部それか。

おいおい、俺もまったくヤキが回ったっての。

まあとにかくそーいう時は俺だってヘコむわけだ。好きなヤツなら、何とかしてやりたいって思うのは常識。同情≠愛情、同情<愛情。

メモリ不足で起動不可能?だったら俺は増設メモリで起動補助。他のモンなんて強制終了してやるから心配ご無用。

…で、正しくそんな一日。

俺の惚れこんだ副社長はといえば、昨日までご機嫌満々笑顔連発だったのに、今日は何だか曇り空。一体何があったんだ?気になってしょーがない。

ツォンさんからの任務連絡に快適な返事を一つ、だけど俺の足は副社長室に直行で、こういう時俺は自分を誉めたいって思うな。タークスは好きだけど、仕事よりかは副社長。だってホラ、消化不良は仕事にも差し支える。

俺が副社長室に行くと、副社長はデスクに突っ伏して溜息なんか連発してた。

あらら、俺の前でソレは無いだろ?…いや、やっぱ良いや。それって信頼されてる証拠。

「暗いぞ、っと。どんより雲が浮いてるぞ」

「レノか…。もう放っておいてくれ、私の事なんか…」

そう言ってまたしても溜息一つ。

放っておけって言われても、そーは問屋が卸さないってな話だ。

だから俺は副社長の隣に構えると、その肩をゲットしつつ事情聴取。一体何があったんだ、ホシはどこだ、俺がとっちめてやるけど。

そんな頑強で頼りがいのあるSPの俺に向かって、副社長は溜息+一言。

「…仕事中だろう?さっさと任務に戻れ」

「はい、ソレ無理!今の俺の仕事は副社長の心の悩みを解す事だし?」

「…馬鹿じゃないか、お前」

心底呆れたようなその物言い、俺的には結構スキだけど。でも残念、今はパス。だって今はそれどころじゃない。早いトコ副社長のCPUを何とかしないと、俺の方がメモリ不足んなる。

Ctrl+Alt+Delete=Error×。

「まーまー。たまには良いんじゃない、俺を頼るってのも。意外なトコで悩み解消ってのもアリかもよ?」

「お前に悩みを打ち明けても解決するとは思えないけどな。…まあお前には関係ない話だ」

関係ナイ?

それこそ、そんなの関係ナイだろ?

「良いから良いから。物は試しで話してみたら?」

そう言うと、社長はいかにも訝しげな顔して俺を見てくる。あー恐い恐い、でもそういうのも割とスキ。困るんだよな、こーいう惚れた弱みってヤツはさ。

とうとうギブアップしたらしい副社長は、ヘルプ参照ってな具合にとうとう俺にソイツを打ち明けてきた。さて、じゃあその話ってのはどんなモンか?

「私なりにやっている事は色々あるが、どうもそれらは不評らしい。まあ主に親父にだけどな。私には副社長という肩書きだけあって、実行権がいまいち希薄だ。一体私の副社長という肩書きは何だ?」

「あー…」

俺は思わず納得。これは予想以上に重い話。

ま、でも俺はだからってギブアップはしない。だってこーいう時こそ恋人ってのは力になるモンなんだろ?だったら俺は助け舟。

肩書きは肩書き、じゃあ副社長って何か?そりゃ当然、副社長って仮面つけたルーファウス神羅殿に決まってる。って事は。

「副社長を休んでみれば?」

「――――――は?」

「だから休むんだよ、副社長ってヤツを。たまには一日ルーファウスデーがあっても良いだろ?」

「…はあ…お前に話して損した」

副社長は俺の顔を見るなり、げんなりした顔してダウン。

おかしいな、俺ってそんなに変なコト言ったか?

だって毎日副社長じゃ疲れるに決まってる。俺だって、神羅から離れればレノ様に戻るんだからそれと同じコトだと思うけど。因みに今の俺は副社長専属レノ様、タークスの俺じゃない。

「じゃ、例ってコトで」

俺はそう言って、副社長の髪を鷲づかみ。それからソレをワシャワシャすると、副社長のビシッと決まった髪は一気に大雪崩に変身。

で、副社長の反応はといえば。

「なっ!ちょっとお前、何するんだ!!この阿呆〜!!!」

―――――はい、当然お怒りモード。

大丈夫、コレ想定内。俺だって考えナシにBダッシュするほど馬鹿じゃない。

だから俺は予定通りニッコリ笑ってルーファウスデースタートをお知らせしてやるわけだ。

「はいOK!今日はコレで行くぞ、っと。副社長、髪下ろしてた方が良いのに。俺はコッチのが好み」

「誰がお前の好みなんか聞いてるかっ!この馬鹿!」

「…あんまり馬鹿馬鹿言ってると襲うぞ、っと」

「大馬鹿野郎ーっ!!!どうしてくれるんだ、この頭っ。これで今日一日過ごせって言うのかっ」

台無しだとかもう無理だとか言ってる副社長の隣で、俺ときたら至極満足満面スマイル。一体ソレのドコが台無しなんだか。もう無理どころかコレカラ始まるんだし。

そうそう、副社長休業のルーファウスデーはこれからだぞ、っと。

で、手始めに何をするかっていうと。

「折角俺もいるんだし、こっからは甘いトークってコトでどうかな?」

「はあ!?」

まだ怒り止まない副社長、俺の言葉にブチキレ寸前。だけど俺は全然OK、怒ってもスキだし、ルーファウスデーは絶対成功するって分かってる。それは俺の第六感。だけどソイツは完璧すぎる感覚。

俺はまず副社長を宥めて、それから紙切れとペンを要求。副社長は首なんか傾げながらも俺の要求をビシッときいてくれて、俺の手元には紙切れとペンが無事着。さて、こっからがレノ様の腕の見せ所。見ててくれよな。

「これをこうしてっと…」

「???」

俺は副社長の前で、落書きをし始めた。そりゃ勿論、ペンで紙に書く落書きだ。だけどコイツは只者じゃない、強いて言うなら曲者。落書きっていってもヘタレ絵なんかじゃなくて天下一品のヘタレ字。コイツはマジでレア。

だけど残念、副社長にはまだ伝わってないらしい。

「…何書いてるんだ。私を馬鹿にしてるのか?」

「全然!馬鹿にするどころかスゴク応援してるけど。見て分かるだろ?」

「見て分からないから聞いてるんだろう?」

「おっと、ソイツは参ったな。…じゃ、コイツもオマケ」

俺はオマケにもう一つヘタレ字を追加。で、とうとうその落書きはコンプリート。

さてと、コレがどういう効果を発揮するか?

それはもうレノ様が実証済、だってこれは俺の「おまじない」。

俺はその落書きを副社長の前にデンと突き出すと、ニッコリ笑って言ってやった。もう大丈夫だってコトを。

「コイツを常時装備すると、意外な効果があったりするんだぞ、っと」

「――――――――は?」

何だそりゃって顔の副社長。そりゃそうだ、説明しないと使用法も分かりゃしない。ってコトで俺はまたしてもヘルプ君。

「朝起きる、着替える、コイツをポケットに入れる、辛い時にはコイツを引っ張り出す、見る、元気が出る。…OK?」

「…いや全然」

「おかしいぞ、っと。じゃあもう一度。朝起きる、着替える、コイツを…」

「ストーップ!同じ事を繰り返すな、聞くのが面倒だ」

待ったをかけられて俺は一時停止。早く再生してくれなきゃイカれちまう。

だけど副社長は一時停止したまま俺をジロジロと見てくる。それってやっぱり愛の視線?だったら嬉しいね、有り難く受け取っとく。

「レノ…お前本当にイカれたのか?」

「…それもやっぱり愛の鞭?」

「何処が愛の鞭だ!私は真剣に言ってるんだ。お前がそんな事を言い出すなんて絶対おかしいだろう。大体お前はそういうキャラじゃない」

なるほど、それは一理。確かに俺はそーいうキャラじゃない。

だけどこれまた不思議な「おまじない」効果で、コイツはキャラまで変えてくれる。

だって副社長だって同じコトだろ?

分からないって?

じゃあ俺は三度目のヘルプ、三度目の正直。

「いっつもビシッと副社長が、今日はすっかりダウンのルーファウス様だろ?だったらそれも同じコト、“そーいうキャラじゃない”自分なんてゴロゴロしてるって事だ」

そうだろ?

同意を求める俺に、副社長は不意打ち喰らったみたいな顔してる。ほらな、言っただろ?この特殊なおまじない効果ってのはスゴイわけだ。その上俺のヘルプは超絶親切な分かりやすいヘルプときてる。

「そーいう時って完璧ダウンしてる。だから軌道修正じゃなくて最初っから起動しないと駄目。その電源がコイツなんだぞ、っと」

「……」

「ってワケだ。じゃあこのおまじないは副社長に進呈」

副社長は、俺の特製おまじないをまじまじ見詰めながら何だか考え込んでる。そんなに考え込むコトも無いけど、こういう副社長はレアだから俺はそれをしっかり堪能。コレもやっぱり「おまじない」効果?

俺の書いた「おまじない」には、天下一品ヘタレ字一言。

OK!GO!”。

「…何だか良く分からないけど……ありがとう」

暫くして顔を上げた副社長は、そんな言葉を俺にプレゼントしてくれる。ま、最初の言葉は余計だけど俺は満足。でも副社長、ソイツは常時装備がお約束。だから…。

「決まり!じゃ、コイツは今日から“おまじない”なんだぞっと」

俺は「おまじない」をサッと副社長のポケットに捻じ込んだ。ちょっと皺んなっても大丈夫。何しろ「おまじない」がそれを証明してる。今捻じ込んだヤツには何て書いてあった?…そ、“OK!GO!”。

だから、どんなふうに間違っても、どんなふうに転んでも、どんな道に迷い込んでも“OK”。とにかく“GO”だ。

「レノ…お前」

「ん?」

質問大歓迎だけど?

―――――――と思ったら。

「あ〜っ!副社長!!それは反則だぞ、っと!!」

イキナリの襲撃に俺はビックリ仰天。考えてもみなかったんだぞっと。

副社長は突然俺をガッツリ掴むと、不意打ちでポケットに手なんか突っ込んできた。で、何をしたかって言えば当然―――――俺の「おまじない」奪取。

…ちょっと恥。

まさか見られるなんて思ってもみなかったけど、まあ人生こんなコトも有。バレたらバレたで仕方無いし、それにコレって愛の証明っぽいし?

「―――――お前…これ、いつも持ち歩いてるのか?」

びっくりした副社長が、俺にそんな当然のコト聞いてくる。そりゃそうだ、だって「おまじない」だから。

「…信じられない。まさかこんな物を持ち歩いてるなんて」

「何で?だってコレ、すごいレアだけど」

「レアって…だってこれは…単に私の書いた伝言じゃないか」

そ、俺の「おまじない」は副社長直筆の伝言。ソイツは俺が常時装備してるもんでもうホントボロボロ。だけどソイツは絶対捨てられない俺の「おまじない」なんだぞ、っと。

おまじないの文字は何かって?

ソイツはな―――――――――“しっかりやれ!”。

ホント笑える。コレってホントは単なる説教。

だけどソイツが意外な効果を発揮して、今じゃ俺にとっては起動スイッチおまじない。俺が何か変なコト考え始めたとしても、俺のポケットの中のコイツはいつだって“しっかりやれ!”ってガツンと説教。しかも惚れた相手の説教ときてる、ソレを無視するワケにはいかないって寸法。まあ、世の中ウマく出来てる。

「俺はコレみてガツンと気合入れてる。だから副社長はアレを見てガツンと元気出せば良いんだぞ、っと。OK?」

「……っていうか」

「っていうか?」

「―――――お前って変な奴」

おっと、コレは一世一代誉め言葉。そーそー、俺は変なヤツで良い。そーいう変なヤツだから副社長は俺に一目、愛までオマケ。だけど今じゃオマケの愛の方がデカくなったってワケだ。それも良いだろ?

副社長は俺を見てちょっとだけ笑うと、やっと俺の言いたいコトを分かってくれたらしくてルーファウスデーをやろうなんて言い出す。

ハイりょーかい、それでこそ俺の副社長。

OK、GO!

「…あ、でも。お前、仕事をサボる事になるんだぞ?言っておくが私はフォローしないからな」

「問題ナシ!もー全然余裕!じゃ、手始めにドコ行く?そりゃ勿論、ルーファウスデーはプライベートだろ?ってコトは神羅はNG」

「別に何処でも良い。お前に任せる」

「りょーかい」

ルーファウスデー成立。俺は俺でレノ様デー。

今日は、副社長もタークスもお休み。

だから俺と副社長はツマラナイ神羅なんか抜け出して、今日はいっぱい自分を満喫予定。そしたら明日からはしゃんとする。何でかって?そりゃ明日からは強い味方登場、そうそう、あの「おまじない」がな。

俺は頭フル回転させてミッドガル地図を広げる。さて、今日はドコをどんなふうに攻めるか?俺の肩にかかったルーファウスデー、やっぱり此処からも腕の見せ所。

だけど、ちょっとその前に忘れ物。

「なあ、最大の“おまじない”があるけど」

俺は副社長を振り返りそう一言。

なあ、知りたいだろ?最大のおまじないってヤツがどんなモンなのか。

「何だ?」

「ちょっと耳貸してくれよ」

俺の言うまま耳を貸してくれた副社長にアリガトウ。

だから俺はとっておきの最大のおまじないってヤツを教えてやるワケだ。ソイツはちょっと贅沢に、副社長の唇あたりにかかるおまじない。

ちゃんと受け取ってくれよな?

「っつ!…な、なな何すんだっ」

まだ昼にもならない午前中、副社長室で激写価値100%のキスをお見舞い。

副社長、意外とこーいうのに弱いな。顔、何か赤いけど?

―――――――――もー…マジ愛!

「ほんっと好き!」

「ばっ!何するんだ!抱きつくなっ、こんな所でっ!」

「良いだろ?だって今日ルーファウスデーだし」

「お前なあっ!」

 

 

 

俺のおまじないは効果100%の最高級品。

柄にもないってことは100%も承知のおまじない。

それでもコイツは、俺にとっちゃ捨てられないハイグレード。

それどころか、惚れた相手はスーパーハイグレード。

だから俺は「しっかりやる」。

OK!GO!、ってふうに。

 

 

 

END

 

back