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俺はこんな時期なのに舞いこんできた退屈任務をさっと終えると、早々にも神羅に帰ってきた。ルードと一緒に出向いて、収穫はまあ100人程度。少ないか多いかは力量の判断ってやつ。だって此処で頭数だけ揃えたって、何の技能もないんじゃオハナシにならないし。 そう考えると適度って言葉でも許されるんじゃないかってトコだろ。 まあそうして俺とルードが捉まえてきた奴らのその後はルードに一任、何ていっても俺は多忙。ヤル事は常に山積みなんだし。 まずは俺のタイムスケジュール。 朝はモーニングコールで起床、で、出勤。 出勤したら社長室に挨拶して、そっから任務スタート。で、その任務はとりあえず前半戦と後半戦に分かれる。まあ時間的に無理な任務は仕方無いけど、できる限りは昼頃神羅にリターン。でもってリターンした神羅で何をやるかっていえば、これまた面倒だけど社長室に挨拶。 これ、ただの挨拶じゃない。 何でってこれはスマートなお誘いだから。何のお誘いかっていえば。 「社長、昼だけど」 「…またお前と一緒に昼食をとるのか?」 「ナニ、嫌?」 「別にそういう訳じゃ…」 そういう訳じゃないけど腑に落ちない、そう言いたいんだろ。わかってますって、言いたいことは。でも良いんじゃない、二人ランチだってオツってもんだ。何しろ一人でウジウジとツォンさん回想にふけって食事 じゃ、マトモに食道だって働きやしないだろ。 まあコレは俺の心遣いってヤツなんだぞ、っと。 だから感謝されても拒否はナシ。そうじゃないと俺が困る。 「で、どこに行く?」 大体この社長の食事は普通のトコじゃない。でもそんなのはもう慣れたし、俺は基本的に何でも良いから別に問題はない。とりあえず社長の好きなトコに行って、社長の好きなモノを口に入れとけばそれでOK。俺はまあ監視役みたいなもんだ、食道が働いてるかどうかってなふうに。 で、今日の社長は珍しく神羅内の食堂の気分。 だから俺はそこまでエスコートだ。まあ食堂っていっても普通の食堂とはちょっと違う。やっぱり特別なトコで、そこで食事してるヤツといったら幹部クラスくらい。イコール、人は少ない。悪くすれば…いや、違った、良くすれば、誰もいないってコトもあるわけだ。 で、今日の食堂は収容者0。というわけで、俺と社長の貸切御礼が即決定。 とりあえず注文なんかを終えて、俺は社長にズームイン。 最初の話題は何にしようか? 「候補100人。どう?」 俺はまず前半戦の功績を発表した。まあ数字的にはあんまりかもしれないけど、社長はふうんとしか言わない。何だ、随分と無関心だな、っと。 俺とルードが頑張って意味のない任務をこなしたっていうのに残念だな。 「…レノ」 「んー?」 「朝のことなんだが…」 「ああ、アレ。アレがどうかした?」 社長がそう切り出してきたのは正にビンゴだった。ま、俺もおいおいその話は詰めていかなきゃなって思ってたトコロだし丁度良い。でも意外だな、こんなに早くそれを切り出すなんて。…でも悔しいのは、チラッとツォンさんの顔が過ぎったところだ。 「……ツォンを忘れる、というのは…無理じゃないかと思う」 ―――――――早すぎる。 俺は咄嗟にそう思った。結論、早すぎるよ、社長。そんなのは未来のことなのに。これからの努力次第だろう。 だけど分からないでもないんだよな、やっぱり。忘れられないんじゃなくて、忘れたくない。それが本音ってコトなんだろ。 「…じゃ。あの話は白紙だな…っと」 「待て。何で、何でそれが条件になるんだ。お前が主任になるのと、私がツォンを忘れるのとは、関係なんかないだろう?」 「関係あるって」 「何で」 何でって、そんなこと聞かれても。 それ、答えなんか言っても良いのかなっと。どうなっても知らないけど。 ―――――――――…準備は良いかな、社長…? 俺は社長をじっと見て、それは、と切り出した。なるべくマジメモードで。 「それは…俺が嫌だから。俺は、社長の心の穴埋めにはならないって決めてるんだぞ、っと。ということはつまり、主任って立場とツォンさんをイコールで見てる内はそんな話は受けられないな」 「心の穴埋め、って…」 そんなことは思ってない、そう言って社長は俺を睨むみたいにする。あー、そんなに見詰められても困るんだよな。そういう視線がこれまたツォンさんをチラつかせるんだから。 そういうの、俺は好きじゃない。 どうせ…そうそう、ツォンさんと一緒にオショクジしてた時はもっと違う眼で見てたんだろ。そのくせ、俺には睨みときた。ま、ショックというより笑えるけど。 だから俺はもう一撃。 「そうかな?俺にはそう見えるな…っと。無言で分かれって言われても俺は無理。冷静に対処しろって言われても俺は無理。つまるとこ、ご期待に添えないかもってコトなんだけどな」 「……」 「ツォンさんってそういう人だっただろ。社長が何も言わなくても、何言いたいか理解してる。いつでも冷静迅速且つスマート。…そんなの、真似できないって」 あー、ドツボ。 何でツォンさんの良いトコなんて語ってるんだか。こんなこと言ったら社長の頭の中はツォンさんのウィルスでいっぱいになるって分かってるのに。 俺はちょっと反省してみる。でもその反省は長くは続かない。だってそうそう、此処で反省にドップリ浸かる、そういうタイプじゃないんだよ俺は。 それなのに、何だか調子が狂うな。 それで結局社長が出した答えは何かっていうと、コレ。 「…そんなの望んでるわけじゃない。大丈夫だ」 「本当かねえ」 絶対信用できないんだけど。 「大丈夫…だ」 「ふうん、そ。…じゃ、とりあえず考えとく」 もう良いや、この話は。ともかく俺が主任になるとかならないとか、もうそんなのは後回し。どうせ仕事は続いてくんだしそれをこなすのは俺達タークスなんだし、そこに例えツォンさんがいなくっても俺達はともかくやるしかない。 つまり主任だとかそんなのはホントに肩書きだけってコトだ。神羅にとって分かりやすい名前を付けとくってだけの話…そうそう、社員ナンバーの英数字みたいにさ。 俺はその話題を打ち切りして、ともかく他の話題に移ろうと思った。でもじゃあ何にするかって思っても、ま、なかなかこれも難問。俺の頭の中にはチラッとツォンさんが掠めるくらいだし、そんなんじゃ俺の方がもたないんだよな。 と、此処で良い具合に助け舟。 「さっきの仕事の話も…良いか?」 「んー?」 さっきの仕事。っていうとアレか、ソルジャー候補が云々ってやつ。 ははあ、なるほどな。やっとその説明に入るってわけだ。これは俺もしゃんと聞かないと罰当たりかな。 で? 「お前も知っているように、今はそんなことをしている場合じゃない。今やるべきことは…第一段階としてのセフィロスの追跡。それからセトラの…」 もう聞き飽きたんだよな、その言葉。 もう何度目?そういうふうに現状説明されて、あれしろこれしろって…俺達はその度に人形みたいに了解出して、それが正しいとか間違ってるとかそんなの疑問一つ持たずに此処まできたんだ。…ま、本音は微妙だけど。 「了解、そこはもう知ってるって。で、そこから先は?ソコの話じゃなくって?」 「…そうだな。だからつまり―――――――…」 つまり? つまり、あの意味ナシの任務の理由ってのは……? 「…ツォンは、別行動をしてただろう」 そう言う社長の眼が、何だかすっごく寂しそうなのは気のせいかな?でも、まだまだ。此処で助け舟なんかは早すぎる。 「ツォンの単独行動は結果的に彼を死に追いやった。もしあの場での行動がツーマンであれば助かった…と言いきれるわけじゃないけどな。ともかく主要任務がツォンに向けられていて、その結果が現状という事だ。…ツォンの請け負っていた任務は、誰かが引き継がねばならない」 「…ま、ね。それは仕方無い」 「だから…本来ならそのツォンの任務を、残るお前たちタークスに即令しなければならない。でもそれは、恐い…気がする」 「恐い?」 意外だな、っと。社長からそんな言葉が出るなんて。だって社長は恐怖政治がお好みなんだろ。それなのにその発案者がそんな弱気な発言なんて考えられないな。 って言っても、考えを180度回転させれば深く納得。 「執政」と「生きる」ってことはまるで別物だもんな、それは俺も知ってるんだぞっと。だって俺はタークスとしては人を殺せるけど、レノ様としては人を殺せない。理由があるからそれをするだけで理由もないのにそんなことするはずもない。 だから社長、社長は理由があるから社長なんてやってるんだ。そうじゃなきゃ、今頃泣いてるんだろうな。ルーファウスって名前だけで生きてたら、多分今頃、ツォンさんのことでドップリ落ちてたんだろうって思う。これはもう高確率で。 そう思うと因果だよな。 社長は知らないだろうけど、それは俺も一緒なんだぞ…っと。 だから判断が鈍る。時々、俺に戻るから。 「同じことに、なって欲しくはない」 ――――――――――ほら、時々戻るだろ? でもやっぱり… 「信用してるんなら。そんなコト言わないで欲しいな、っと」 プロでいなきゃ、な。 嬉しいとか、そんなふうには思わないように。
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