叶えなきゃいけない恋。
 そういうのをしているらしいザックスは、やはり何度となくセフィロスに恋愛相談を持ちかけた。それは時間が経つにつれどんどんと悪化…セフィロスの感覚からすれば悪化していき、果てにはセフィロスの部屋にまで乗り込んで相談するという事態にまで陥ったものである。
 そういうふうになって、セフィロスにはますますザックスが分からなくなった。
 以前からジャンルの違う男だとは思っていたが、仕事はできるし人望はそれなりに厚かったから、一目は置いていたのである。しかしこうなってくると事情は変わってくる。
 一体何故そこまでして自分に相談するのか。
 どうせだったら違う人間に相談すれば良いものを。
 そう思いもしたが、もしかしたら先日のバーでの出来事があったからこそ自分に拘るのかもしれない、ともセフィロスは思っていた。そう、あの日あんな本音を言ったから、ザックスはそれに対抗しようと意固地になっているのではないか、と。
 まあどっちにしろ、その事態がセフィロスの溜息を増やしていたことには変わりが無い。こうなってくるとさすがに話しに付き合うのも疲れてきて、日毎溜息が増えていく。仕事の間もその話、プライベートになってもその話…その上それはセフィロスの興味の範疇ではないから尚悪いといった具合。
 ――――――どうにかできないものか。
 セフィロスがそんなふうに思うようになったのもごく自然なことだろう。
 どうにかしてザックスの話を誰かに振るか、若しくは全く失くしてしまいたい。それは別にザックスが憎くてそう思うわけではなく、その話題が煩わしいからだ。
 しかしそれを考えるに、まず前者は無理であろうことが分かっている。何故なら、セフィロス以外にも友人が沢山あるザックスがわざわざその中からセフィロスを選んだ事自体が既に答えだからだ。他の奴を選ぶならばとっくにそうしているはずなのに、ザックスはそれをしていない。つまりは、もう他の人間に移すことはできないのだ。尤も、もしかするとザックスはセフィロス以外の人間にもそうした相談をしているのかもしれないし、そうだとすれば尚更誰かに移行などありえないことだが。
 そうとなれば、残るは後者――――――全くなくすこと、だ。
 全く失くすには、ザックスがその悩みから解放される必要がある。この場合、解放は二つに一つしかない。つまり、ザックスの恋が成就するか、もしくは完全に破られるかのどちらかという事だ。
 しかし此処で問題なのは、先日のザックスの言葉である。
 恋は絶対に叶えるもの…ザックスはそう言っていた。
 ということは、ザックスの恋が成就さえすればその煩わしい話題は自然と無くなるということだ。此処までくれば分かりやすい。
 ―――――――どうにかして成就させなければ。
 別段応援する気があるわけでもなかったが、セフィロスはそう思うようになった。
 とにかくザックスの恋を成就させて、あの話題をなくさねばならない。でなければセフィロスはこのまま疲労が溜まる一方である。
 だから、セフィロスはまずその恋が成就するように何かをする必要があった。
「恋を成就させる方法は…」
 恋だの愛だの、馬鹿らしい。
 そう思っているセフィロスがそれを考え答えを導き出すのは、当然至難の技である。そもそもそういう感情に長けていないのだから、ザックスの振ってくる話題が重苦しく感じるのだ。しかし成就の手助けをする為には多少なりともそれらの気持ちが理解できなければ始まらない。どういう手ほどきをすれば適切かが判断できないからだ。
 が、それが容易に判断できるくらいならザックスの話題だって然程苦になどならないのである。
 全く、とんだ矛盾だ。
 
 
 
 相変わらずセフィロスの元にやってきては相談を繰り返していたザックスは、ある日突然切り出された言葉に驚いて目を丸くした。
それは今しがたセフィロスの口にした言葉が、あまりにも意外なものだったからである。
 思わず三回も聞き直してしまったほど、それはザックスにとって意外なものだった。
「あの…今、何て?」
 ザックスがもう一度それを聞きなおすと、セフィロスは遠慮一つない呆れ顔をして同じ言葉を繰り返す。
「だから。お前の好きだという奴に会わせろ」
「は…会わせろって、そりゃつまり…俺の好きな奴とセフィロスがご対面するって、そういう事か…?」
「そうだ。それ以外に何がある?」
 憮然としてそう言い放ったセフィロスに、ザックスは「ええ!?」と再度驚きの声を上げた。一体何度驚けば済むんだ、という感じである。
 しかしザックスにとっては、幾ら驚いても驚き足りないといったくらい、それは衝撃的な言葉だったのだ。
 一応は客人だからといって軽く出された飲み物は、まるで忘れ去られたみたいに所在投げになっている。いつもだったら話の途中で二杯は飲み終わっているセフィロスも、その日ばかりは手付かず状態で、それは明らかに今日の話がいつもと違うことを示していた。
 セフィロスは腕を組みながらザックスを見遣ると、自分が導き出した答えともいえる方法を強く言葉に現す。まるでそれが最良の策であるとでも言うように。
「まずは俺がそいつと会う。驕る訳ではないが、俺がお前を推薦すれば少しは展開も変わるだろう」
「って言われても…」
 散々驚いた後に、今度は困惑を示すザックス。
 まあその理由も分からないでもない、何しろいきなり「会わせろ」とくれば、誰だってそれくらいの困惑は見せるだろう。しかもこれが親か何かならまだ話も分かるが、相手はセフィロスなのだ。相談をしている以上全く関係ないとは言い切れないが、それでも他人であるセフィロスがそんなことをするのは何だかおかしい。
「いや、それはまずいって!そんな…いきなりセフィロスみたいな大物が来てもビビるだけだって!」
 慌てて拒否をし始めたザックスに、セフィロスは断固として「そんな事はない」と言い張る。その上、こんなことまで言い始めた。
「お前の心配している事は大体読めている。大丈夫だ、お前の女を取って喰ったりはしない。俺とてそこまで外道ではない」
「いやいや!そういう事じゃなくって!」
「じゃあ何だ?心配することなどどこにも無いだろう?」
 一体何をそこまで心配するのか。
 セフィロスにはそれが全く分からず、自然のままに首を傾げる。そうしたセフィロスの目前では、慌てて「無理」という言葉を連発するザックスがおり、その様子は今迄セフィロスが見てきた中でも一等激しい戸惑いぶりだった。
 そんなに好きなのか、何となくセフィロスはそんな事を思う。
 別段他人の恋愛になど興味の欠片もないが、そんなに慌てて困り果てるほど好きな相手というのはどんなものなのだろうというのは疑問として浮かんでくる。恋愛関係そのものというよりも、その未知ともいえる世界が少し気になったのだ。
 セフィロスの目には、そのザックスの慌てぶりが「男としての焦り」のように映っている。要するにセフィロスが事前に断った、手など出さない、というそれに関して焦っているように思われたのだ。そう思う以上、ザックスが「そうじゃない」と言ってもそれは信じられない。そうに違いない、と思う。
 しかし、そうなってくると返ってその相手が気になってくるものである。
 今迄見たこともないくらいにザックスを焦らせるその相手とは、一体どんな人間なのか。ここまでザックスを惚れさせる相手とは、一体どんな女なのか。どんな顔をしてどんな性格をしてどんな声をしているのだろうか。
 男としてその未知の女に興味を持っているわけではない。
 ただ、一人の人間として、その未知の人間が気になったのである。
「その相手はどんな感じなんだ?」
 セフィロスは、何の気なしにそう聞いた。
 しかし、そう言った後にザックスが妙な表情をしたものだから、内心少しだけ後悔をしたりする。特別な意味など勿論無かったが、それでもやはりそういう言葉はタブーだったか、とそう思って。
 けれどザックスは、直ぐにその表情を解いてセフィロスにこう返した。
「どうって…まあ何ていうか…俺には高嶺の花っていうか。――――…そういう奴かな」
「なるほど、高嶺の花か」
 どうやら随分な相手らしい。
 そう思いながらセフィロスは、自身が想像できる範囲での最上級の女を思い描く。
「身分違いっていうのか…何だかそんな感じがする。何ていうかさ、こっちが気後れしちゃうような…」
「気後れ?お前が?」
 まさか、お前にそんなしおらしい事が出来るのか。
 セフィロスは悪びれもせずにそう言ってザックスのブーイングを買う。
 ザックス曰く、俺だって普通にそうなるんだよ、らしい。まあそれはそうだろう、誰しもそれほど特殊なことはそうそうない。
 しかしそれにしても、セフィロスにはザックスのそういう姿がさっぱり見当付かなかった。まず第一にセフィロスが想像しうる最上級の女というのはどれほど姿形が良かろうが、セフィロス自身に気後れをさせるようなほどのものではない。つまりセフィロス自身は、それほど特殊なのである。だから、どれほどの絶世の美女を思い浮かべたところで何かの感慨があるわけでもないし、自分が劣っているとも思えない。というよりもまず、恋だの愛だのに関心がないものだから、そういうものを感じないのかもしれない。
「…まあ俺には良く分からんが、お前にとって相当な相手だという事は理解した。それで、その相手の相当である所以は主にどの部分にあるんだ?」
 セフィロスはやはり憮然としたままそう問うと、顔か、スタイルか、性格か、身分か、などと早口にザックスをまくし立てた。
 その言葉にザックスは慌てたふうにしたが、一体何故そこまで慌てたりするのだか、これもまたセフィロスには疑問である。
 少し考えていたのだか黙っていたザックスは、暫くしてやっとその答えを口に出した。
「そりゃ、ま…何ていうか。…やっぱり全部かな」
「随分とマニュアル通りの回答だな」
「だって仕方ないだろ。本当のことなんだからさ」
 セフィロスには判らないかもしれないけど、と最後に付け加えられた言葉は、それが嫌味であったとしてもセフィロスを納得させる。
 相手の全部が相当なもの…つまり全てに於いて高嶺の花。
 つまりそれは、顔もスタイルも性格も身分も、全てが高嶺の花だということである。そこからすれば、眉目秀麗だとか容姿端麗だとかいう表現がそのまま使用できるほどの人物であることは確かだ。その上性格も良いときているから器量よしということにもなろう。しかしそこまでは良いとしても、身分まで良いときたらこれはなかなかのものである。
 セフィロスは自己満足するように二度ほど頷くと、ザックスに向かって先ほどと同じ言葉を繰り返した。
「やはり俺が会う方が良いな」
「だ…からっ!何でそうなるんだっての」
 相変わらずザックスは否定するようにそう叫ぶ。がしかし、セフィロスの中では既にそれは絶対の領域に達していた。故に、ザックスに何でなどと言われても全く意に介さない。
 そもそも、こんなうだうだな調子のザックスでは先に進まない。
 しかしセフィロスとしては確実にその恋愛を成就させねばならないわけだから矢張り此処は自分が出るべきだという意見を譲れはしない。
「じゃあザックス。一週間後だ。一週間後の午後九時、この前酒を飲んだ所にそいつを連れてこい。良いな」
「良いわけないだろうがっ」
「じゃあな。話は終わりだ。さあ帰れ」
 セフィロスはそう言うなりザックスの腕をガッと掴み、その身体を持ち上げた。そうしてドアまで引っ張っていくとサクッとドアの向こうに放り出す。いかにももう用は終わったという具合である。そもそも最初はザックスが恋愛相談をするために此処にやってきたのだからセフィロスがその幕を下ろすのは少々ずれているような気もするが…。
「一週間後だ、じゃあな」
「…って」
 バタン、と閉まる無情なドア。
 それを目の前にして、尻餅をついたザックスはこの上なく不機嫌な顔をした。
 そして――――――、
「こ…んの、ばっか野郎っ!!!」
 
 
 
 一週間後のこと、セフィロスは例の約束の為に以前ザックスと酒を飲んだ店で憮然と待ち構えていた。何がかといえば勿論、ザックスと、ザックスの好きな相手である。
 この一週間、ザックスはセフィロスのところにあまり姿を現さなかった。
 それはセフィロスにとって非常に心地よいものだったはずだが、この約束があったせいか、一体どうしたことだろうかと少々気になったものである。あれほど毎日のように相談を持ちかけてきたくせに例の約束をした途端にこんなふうになったものだから、まさかそれほど嫌だったのだろうかと今更ながら思ったりする。
 がしかし、幾らザックスが嫌だと言ったところで、セフィロスとしてはザックスの恋愛が成就しないことには始まらないのだからそんなふうにザックスを気遣っている暇などない。ともかく早いところ二人をくっ付けて、あの恋愛相談地獄から脱さねばならないのだ。そうすればきっと、今みたいに「最近ザックスはおかしいのじゃないか」と考えることもない。
 早いところ解決をせねば。
 酒場で待つセフィロスの心の中にあるのは、そういう願いめいたものと、もう一つはザックスの想い人のことだった。聞いた話だと高嶺の花ということである、それはもう相当なものなのだろう。尤もそれは世間で言うところの相当であって、セフィロスはその枠には収まらないのだが。
「まだか…」
 予定の時刻は午後九時のはずで、今はもう午後九時を五分も過ぎている。
 何だかんだと時間を守るタイプのザックスなのに、今日はえらく遅い。たった五分でさえも遅いと感じるのは、セフィロスがそれだけ時間に早いからだろう。
「…まさか来ないだなんてオチは無いだろうな」
 それは困る。大層困る。
 そう思ってセフィロスは店内にある柱時計をチラと見やると、時間を確認してからドアの方に目を移した。
 ――――――と、その時。
 カラン、と音がして、ドアが開いた。
 そうしてそのドアの向こうから見慣れた男が入ってくる。
 その男はいつもの溌剌さを少々失くしているようで、どこかぎこちない動きをしていた。相変わらずツンツンにハネた髪はそれでもどこかうな垂れて見えるし、いつも無条件に上がっている口端などはすっかりへの字になっている。格好はこれといってキメているふうではなく、言ってみれば少々だらしない。
「おす」
 そう一言口にしてセフィロスの居るテーブルまでやってきたザックスは、背後に従えていた人物をやけに気にしながら、まずはその人物に席を勧め、そうして自分も椅子に腰をかけた。
 それからワザとらしい咳払いなどをしてチラとセフィロスを見やると、もう一度「おす」と小さく口にする。
 ―――――――――何なんだ、この気色悪さは。
 瞬時にしてセフィロスが思ったのはそんなことだった。
 ザックスが妙にしんなりしているのはその最たるものだが、その隣に座っている人物がまた妙にミスマッチに見える。ザックスとその人物とのギャップが、何だか妙に気色悪いのだ。
「約束通り、だろ」
「まあな」
 問われて、セフィロスは頷いてそう返す。
 しかしそれを返しながらも既にセフィロスは、ザックスの隣にいる人物の値踏みを始めていた。
 確か――――――――高嶺の花。
 ザックスはそう言っていた。
 今セフィロスの目に映っているのは、とても華奢な肩を持つ小柄な女性である。身体全体が小柄なのに目だけはぱっちりと大きくて、まるで雨に濡れたかのような水ばんだ目をしている。鼻筋がすっと通っており、唇は実に小ぶり。それから印象深くなりそうな黒く長い髪をしていて、それが本当に一直線のようにすっと綺麗に伸びていた。格好は、とても清楚な感じがする。
 高嶺の花…というのは、こういうものか。
 セフィロスは何となくそんな事を思い、やっと彼女から目を離すと、続けてザックスに目線をやった。そうして、何か適当なものでも頼め、と言う。
 その言葉に反応してザックスが慌ててメニューなどを開いて吟味しだすと、セフィロスは再度彼女に目をやり、ザックスがメニューを見て唸っているというのに早速彼女に話を振り始めた。
「名前を聞いても?」
 良いか、という部分を略してそう問う言葉に、彼女はビックリした様子で目を見開く。ただでさえ大きな目をしているからそれが更に大きくなる。
「あ…リア…です」
「リアか。じゃあリア、早速話したいことがあるんだが」
「は、はい」
 リアと名乗った女性は、潤んだ目を更に潤ませてコクンと小さく頷いた。セフィロスの言葉が威圧的に聞こえるのか、それとも存在自体に萎縮しているのか、真相はわからないもののともかくセフィロスに対して緊張感が抜けない様子のリアは、どんどんと目を潤ませるものだからまるでセフィロスが泣かせているかのように見える。
 セフィロスはそれに少し気分を害したが、まあ相手は女性だしザックスの想い人でもあるのだからそうそう我を通して不機嫌になるわけにもいかない。
「今隣にいる…そこの男のことだが。その男について俺の知っている事を話しておこうと思ってな」
 セフィロスはそんな事を言い出すと、頼まれてもいないのにザックスの事を語りだした。まるで仲人のようである。というか立場上これは正に仲人かもしれないが、問題なのは彼女の気持ちがザックスに定着しているわけではないというところだろう。
 好きとも言っていない男のことを語られるのだから、リアとしても微妙である。
 当然、ザックスなどは気が気じゃない。
「そこのだらしない格好の男は、ああ見えても神羅のソルジャー1stという立場でな。俺とは同僚だ。俺のことは知っているか?」
「はい。あの…英雄と言われている…」
「そうだ」
 セフィロスはその部分に特別な気持ちを込めるでもなく、すぐさまザックスの話に戻る。
「ザックスは仕事の出来る男だ。男にとってこれほどのステータスはない。が、リアが女性であることを考えて付け加えると、遊びも適度に知っているようだし、恋愛などは信じられないほど一途なようだ」
 それが証拠に俺は恋愛相談を毎日されていたんだ、と付け加えると、リアがびっくりしたように「まあ」と言って口元を押さえた。
「そこで俺が一役買おうと思ってな、こうしてこの場を設けたというわけだ。此処まで言えば判るだろうが、その男はリアのことを大層好…」
「だああ!!ちょっと待て!」
 ガタン、と立ち上がったザックスが突然そう怒鳴る。
 そうしてセフィロスに向かって手を突き出すと、ジェスチャーで「待て」と再度念を押す。
 それを受けたセフィロスは眉根を顰めてザックスを見やったが、そこに丁度良く注文の品が届いたのでその場は話を切ることにした。どうやらザックスはいつの間にかしっかり注文をしていたらしい。
 リアの前には綺麗なピンク色をしたカクテルが置かれ、ザックスの前には泡の立ったビールが置かれる。そうしてセフィロスの前には、ウイスキーが置かれていた。
 口に含んでみると、そのウイスキーはどうやらジャックダニエルだったらしい。
「…で」
 暫く話に参加できなかったザックスはそこにきてようやくマトモに口を開くと、改めてというようにリアにセフィロスを紹介する。
「この人は神羅の英雄って言われてるセフィロスだ。今日はその…セフィロスがどうしてもリアに会いたいって言うから、こういうことになったわけで…」
 ごめんな、と小さく謝ったザックスに、リアは笑って「ううん」と首を横に振った。それは可憐な様子で、ザックスが惚れたのもこれが原因だろうかとセフィロスは独り納得したりする。しかしそれと同時に、一体どこに問題があるんだろうかという疑問も浮かんできた。
 セフィロスの目に映る二人は、それほどギクシャクしているふうでもない。ザックスは確かにギクシャクしていたが、二人の会話の中には特別ギクシャクしたものはないのである。
 一体何が問題なのだろうか。
 いつものザックスならばもっと快活に話をするだろうから、彼女に対してはどこか腰が低いというのは確かに言えるところである。しかし、だからといって全くカチコチに緊張しているふうでもないし、言いたい事が全く口に出来ない様子でもない。もう少し一緒にいれば「好きだ」の一言くらいは簡単に言えるのではないかと思ってしまう。高嶺の花だと言っていたリアに対してそこまで話が出来るのならば大したものだろう。
 それに、リアの方も特別ザックスを蔑ろにしている様子は無い。それどころか笑顔で話しているのだから訳がわからない。
 セフィロスは暫く二人を眺めていたが、ウイスキーを一口含んで飲み込んだ後に、ゆっくりと口を開いた。
「リア。単刀直入に聞くが、この男をどう思う?」
「ぶっ!」
 その言葉にザックスは思わず噴出する。
 が、セフィロスは全く意に介さない。
 
 
 
 

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