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PHANTOM -----------------------------------------
木陰に流れる風の中で――。 クラウドは川の水に己の衣服の一部を切り取ったものを漬けると、固く絞る。 水面は土手の下で、戻る先はかなりの傾斜を上った先。 剣を杖代わりについて登ると、そこには苦しげな呼吸を漏らしたシドが横たわっている。 「大丈夫か?」 声をかけながら近寄れば、薄く空いた目が苦しそうに笑う。 「大丈夫に決まってるだろーが」 口調は何時もと同じなのに、その苦しげな声音は誤魔化せない。 クラウドは眉を寄せながら水に濡れた布を額に押し当てる。 布越しでも感じるシドの体温は、驚く程に熱い。 「無理をするからだ。早いところ言ってくれれば・・・」 苦渋に満ちたクラウドの声に、シドはただただ苦笑をもらすばかり。 「言えれば、苦労はしないだろうよ。まさかこの俺が、みんなの足を引っ張るなんてこたしたくねーじゃねーか」 「後で倒れられる方が、余程迷惑だと思うがな」 「言うようになったな、クラウドよ」 「当然だ」 軽口に隠して言えば、真摯な瞳が答える。 若きリーダーの整然とした表情が、なんだか痛くて、シドは見ていられない。 こんな風に一人の仲間にこだわってる暇などないはずなのに、なのにクラウドは直ぐに躓いてしまう。 ただ一人すら失うことへの恐怖。 シドは薄く笑うと、クラウドの頭を抱き寄せる。 「心配すんなって。鬼の霍乱ってやつさ。元来俺はこんな柔じゃねーからな」 「それは判ってるさ。でも、人間は何時どういう状態が命取りになるか判らない」 「俺一人くらいいねぇでも、お前にはまだいるだろう?」 心臓の音を間近に聞きながら。 「それでも俺は、シドがいてくれる状況が良いんだ」 発熱の所為でか、多少早い鼓動に、眉を寄せながらクラウドは。 「シドにとっては、どうでも良いことかもしれないけどな」 「そうは言ってねぇんだけどな」 「そうなのか?」 「ああ・・・」 誰だって、誰かがそこにいる状況の中でぬくぬくと生きていたいと思う。 誰かがそこにいて、だからこそ幸福を味わうことが出来る。 だがそれは平和の中でのことだ。 何時なんどき命を落とすのか判らないこの状況下で、これから先にも誰も失わない努力をするのは並大抵のことじゃない。 それこそ、絶対に不可能なのだ。 シドは彼らと仲間になることを決めたときに、同時に決めたことがある。 クラウドは柱だ。彼ら仲間にとって、柱なのだ。 だから、絶対に失えない。 誰もが思っているだろう。 ――だからクラウドを守ろう。 それが、最終的な目的に一番近いことを。 全ての可能性を秘めて、敵に太刀打ちできるだけの強さを持ったのはクラウドだけだ。 最後に頼ることになるならば、絶対にクラウドだけは――守ろう。 「心配すんなって・・・」 抱き寄せた髪に唇を落として言えば、クラウドが抱きついてくる。 「心配はしてない・・・けど、俺は――きっと・・・」 抱きしめた頭が腕を逃れて離れていく。 真正面から見つめられて、シドは苦笑する。 「するか?」 「うん」 くしゃりと表情を歪めたクラウドが近寄ってくる。 きっと間違ってる・・・。 脳裏を過ぎる常識のラインが歪む。 「俺を好きか?」 全てを破壊してしまう言葉を求めたシドは――。 「うん」 降ってきた想いを受け止めた。
無理を強要していると思う。 それは判っている。 クラウドは貫く体がきつくしなるを見て、それが己の苦しみのように眉を寄せた。 年の割りには若い肉体が、クラウドの愛撫に答えて跳ねる。 うつ伏せに荷物に顔を埋めたシドは、苦しげな呻きを漏らしつつも、クラウドの動き合わせて腰を振る。 腰からまわした手で前を嬲れば、従順な体が答え、滲んだ先走りの液がグチュグチュを音を放つのを耳で楽しんだ。 他人の体に潜り込むという快感。 その相手が、己の精神的な支えであるならなおのこと。 クラウドは肉欲に夢中になる。 白い背がしなるのも嬉しく眺めて。 息を詰める男を――愛しく思いながら・・・。 激しく貪っていくのだった。
「ちったぁ、加減しろ、この若者が!」 怒鳴るシドを眼下に捕らえて。 「でも感じてた」 「そ、そりゃな・・・」 よもや良い年をした男が、自分よりもはるかに年下の男にひぃひぃいわされるなんて、なんてことを考えているのがありありなシドを見て――。 「好き・・」 クラウドは吐息で囁く。 「ああ、俺もだよ!」 やけくそに答えるシドの、まだ少し赤い頬を撫でて。 「絶対に生き残るから。だから、その後で俺と・・・」 クラウドは小さな祈りを込めて、シドの汗ばむ体を抱きしめる。 虚脱し体は素直にクラウドの腕に納まり。 「ああ、俺だって生き残ってやるさ」 シドも答えて、クラウドの命を確かめるようにその体に手を伸ばしたのだった。
END
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