| 不思議なタバコ |
| 何処だかに闇の市場というのが立っていて、そこに寄ったクラウド一行は、あまりの品の安さに、そこで買い物をすることにした。 幾ら化け物連中が金を落とすからと言って、高級装備を買えばそれなりに消費されてしまう金銭を、他のもので無駄にすることは出来ない。 食事はほぼ動物性たんぱく質と、食べられる草類を料理しているので、あまりかからないにしても、シドの嗜好品や、仲間達の服に限っては、方々どこも高くて、容易に手の出せるものでもない。 だから闇市は、彼らにとってはありがたいものだった。 「俺はタバコを買いにな」 闇市の中でも、比較的目立たない場所に、そのタバコ屋はあった。 通常の値段からすると、破格の値段で提供される、自家栽培のタバコ葉を使用していて、加工は手で行うという、実を言えば、市販のものよりも手のかかったものであったが、それは本当に破格の値段で売り出されていた。 「すげぇな」 思わず声を上げたシドに、店の主人は苦笑する。 「道楽でやってるものですよ。金にもならないような道楽なので、材料費くらいは稼ぎたいと思ってね」 言った主人は、二つ程見本をくれる。 火をつけて一口吸ったシドは、うん、と唸る。 「これは凄いな。よし、あるだけくれ」 「全部ですか?」 おどろいた主人に、シドは頷き、ポケットから有り金を差し出した。 「これで足りるか?」 「ええ。おつりが出ますよ。待って下さい」 主人は誤魔化すことなく値段を受け取って、タバコを全部シドへ渡してくれた。 闇市から戻って、宿でそれぞれ手に入れてきた品物を見せ合う。 仲間のものから全て、互いに分担して購入したので、ここで交換するからだ。 食料関係はティファ。医療関係は案外センスの良いバレットとこれは物持ちのヴィンセント。 シドは一方的に個人の品物を買い込み、クラウドは金銭感覚がないのと、センスもないのとで、武器から戦闘用品を買いに走った。 結果・・・・-----。 「これ、何に使うの? クラウド・・・」 辺りに散乱する火薬と小瓶。洗面器に金属棒。 「火薬と小瓶は爆弾に、洗面器は頭にかぶってヘルメットに。金属棒は武器の補強に使うんだ」 流石元ソルジャー。日用品まで武器に仕立てるその根性は並みでない。 しかし・・・。 「私・・・洗面器をかぶるのはゴメンね」 呆れたようにティファが言う。 「俺もお断りだ」 バレットが、今その場で洗面器を頭にかぶりながら反対する。 「そうか? 寒い地方では案外と暖かいんだけどな・・・」 「寒い地方? って、これ、戦闘用のヘルメットじゃないの?」 驚いたティファが言えば。 「こんなやわいので戦闘用のヘルメットになるわけがないだろう?」 反対に呆れられてティファは項垂れる。 常に馬鹿だ馬鹿だと思っていたクラウドに、まさか呆れられるとは・・・。 不覚!!! 結局洗面器は、寒い地方の防寒具として使用されることになった。 夜中、クラウドはシドの部屋に忍んでいた。 というのも、シドの大量購入してきたタバコを目的に。 弱い20歳過ぎ。大人の男が、多少肺活量が落ちるからといってタバコを吸わないわけがない。 といっても、別段嗜好の類はあまりないので、タバコには興味も覚えなかったが、闇市から戻ってきたときにシドのふかしていたタバコの匂いが何故か鼻に残り、吸いたいという気持ちを起こさせた。 眠っているシドの顔を確認して、こそりこそりと荷物に近寄る。 目的のものは直ぐに見つかった。何しろ肌身離さず持ち歩くシドの元、枕元に放置してあったからだ。 こそりと寄り、一本を抜き出して火をつける。 辺りに不可思議な匂いが立ちこめ、クラウドの思考をぐにゃりと歪める。 「・・・凄い・・・・」 口から肺に通過する過程において、爽快感と不可思議な感触が過ぎる。 「俺・・・・」 視界がぶれ、辺りが霞む。 火のついたタバコを銜えながら、歪む視界のままに、倒れようとした体を、誰かが支える。 「おい、大丈夫か?」 タバコの匂いに目を覚ましたシドだった。 「気分が悪いのか?」 「ううん」 気分はすごぶる良い。というより、良すぎてどうにかなってしまいそうな程だ。 「それより・・・」 クラウドは、心配して顔を見ているシドの、その今は何も銜えてない唇に、タバコを銜えたままで唇を寄せた。 「お、おい!!」 「何?」 「火傷させるつもりか?」 「あ、そうか・・・」 火のついたタバコを手で取り、灰皿に押し付ける。 「お前、なんだかおかしいぞ?」 「そうかな?」 首を傾げたクラウドは、ニヤリとあまり嬉しくない笑みを浮かべて、シドの手を取る。 「しよっか?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 「優しくするよ」 弓なりの唇が、妖しい言葉を紡ぐ。 シドは慌ててタバコの箱を見た。 手書きで注意が書かれた箱の裏側。 あっても目にしたことはないそれを、シドは必死で読もうとする。 そして。 「嘘だろう? 誰が自家栽培で麻薬なんて・・・」 「初めてでも大丈夫。俺、うまいから」 クラウドが背後に迫る。 「た、助けてー!!!」 シドは大声でわめいた。 |
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