又夢

 

 

 

貴方に近付く夢を、見ていたい。

 

 

 

「勘違いしないで貰いたい。俺とお前は対等ではない。決して俺に近くなったなどと思うな」

はい、分かってます。

俺はそう謙虚で素直な返事を返して良い子を演じる。

そんなの言われなくても分かってる。どうせ貴方は振り向かない。どうせ貴方は遠いままの存在。

感情のないキス。

乱雑なセックス。

それらをしたって結果はいつも同じだ。どのくらいヤったって近くなんてなりはしない。それどころか俺は貴方の奴隷状態。何があっても貴方の手中、手の平で踊る人形。

それでも少しだけ夢見てた。

少しでも貴方に近付く、そんな、夢。

 

貴方は相手が誰だろうと表情も変えずに乱暴に抱く。女でも男でも何でも良い。ただ欲を満たせばそれで完了。そういう一瞬。

だけどそれは、俺や、その他のくだらない夢を見てる連中には、恐ろしいほど喜びの瞬間。貴方の精液でまみれた顔。

それさえ愛しい。

みすぼらしい悦楽の表情を漏らす自分の顔でさえ、愛しく思える。

その姿を見ながら貴方はせせら笑ってた。

そんなに楽しいか、って。

そんなに嬉しいか、って。

イカれてるな、そうも言った。

だから俺は答えた。

 

「そうだね。イカれてる」

 

貴方には分からない。

俺や、俺と同等の輩がどれだけイカれてるかなんて事。

俺達は夢を見る。

貴方に近付く夢を見て、それから貴方に無茶苦茶に抱かれながらまた夢を見る。

それが終わったら夢は消える。

だけど消えた瞬間にまた夢は始まってしまうんだ。

何故かってそんなことは簡単だ。

夢から覚めたら、そこは現実だから。現実はバカバカしい。そこにあるのは貴方という偉大な存在と、貴方という存在に近付きたい俺達という存在。そういう現実が襲うから、だから俺は思う。

貴方は遠い、そう思うんだ。

セックスが終わって、だらりと垂れた精液を指に絡ませながら、貴方は遠い人だと痛感する。そんな遠い存在の貴方だからこそ、また夢を見てしまう。

貴方に近付く、そんな夢を。

 

 

 

ある時、貴方は聞いた。

「俺に近付く事に何の意味がある?そうなったとてお前の存在価値など変わらん」

はい、そうです。

俺は謙虚にそう答える。

そうだね、そうだよ。貴方に近づけたところでそれは、俺の価値が上がるわけじゃない。だけど少しでも貴方の中に俺の存在があったなら、救われるような気がするんだ。

多分、それこそ「夢」だけど。

「やはりお前らはイカれてるな」

そう嘲笑って、貴方は俺の髪を鷲づかみにして引っ張る。唐突の痛みに顔を歪めて呻き声を上げると、貴方はその制裁をするかのように俺を殴った。

腹の底に響く鈍い痛みは、並大抵のもんじゃない。

一瞬記憶が無くなりそうになって、それでも俺は何とか正気を保ってた。でも口からは赤い血が噴出した。

その血が、貴方の顔に飛び散る。

赤い斑点模様は、貴方を更に遠く思わせる。

身体に力が入らなくて、腹の底がジンジンと痛くて、気が遠くなりそうなのに、貴方は容赦なく俺の体にアレを埋め込む。うつ伏せ状態のまま俺は、自分の体を支える力すらなくて、貴方の腰の動きに合わせて操り人形みたいに揺れてた。

まだ正気があるのか、そう聞かれたから、はい、と答える。

貴方は、大したもんだ、と誉めてくれた。

喘ぎ声と呻き声。

喜びと痛み。

近さと遠さ。

混ざり合って、混ざり合って、混ざり合って……

 

また、夢をみる。

―――――――――――ねえ、その夢は絶対叶わない夢。

だけどね、

 

「好きです、セフィロス」

「……」

「好きです」

「―――――――イカてれるな」

 

貴方がいるから、みれる夢なんだよ。

貴方がいたから、みてしまった夢なんだよ。

貴方がいなかったら、みたくもなかった夢なんだよ。

 

 

 

イカれてる、狂ってる、気色悪い、

そう言って貴方は俺達を殴り、犯し、夢を与える。

貴方に抱かれるくだらない俺達は、その度に体も頭もオカしくなって、他の誰かが怪訝そうな顔をしても気味悪がっても、体中に痣ができて時に吐き気に襲われても、それでも夢を見続ける。

貴方に殴られる度、オカしくなる。

貴方に犯される度、オカしくなる。

夢を与えられる度、オカしくなる。

それでも俺達は夢を見る。オカしくなって夢を見る。

夢を見るためには、オカしくならなきゃ。

そうでしょ?ねえ?

グルグルグル。

まるで永久。

 

夢を見るのが先?

それともオカしくなるのが先?

 

 

 

「お前たちはイカれてる」

俺は貴方の奴隷状態。

「はい」

何があっても貴方の手中、手の平で踊る人形。

グルグルまわる、夢見る人形。

 

 

「でも俺はね、幸せ」

 

 

夢が始まり、そしてまた、終わる。

それは貴方に近付く、そんな、夢。

 

 

 

END

 

貴方ニ近付ク、夢を……イズレハ私モ逝クカラ。

 

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