盲従しせり猛獣よ
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俺は覚えてる、ある年ミッドガルにやってきた巨大サーカスのこと。 それは移動サーカスで、とてもとても素晴らしい演技を見せるサーカスで、誰も彼もそのサーカスに感動していたっけ。 俺はそれを見ることはできなかったけれど、彼らの素晴らしさの片鱗には触れられたと思ってるんだ。
ある日。 あのサーカスからライオンが逃げ出した。 飼いならされたライオンだったはずなのに、野生を取り戻したみたいにサーカスの人々を襲って逃げ出したんだ。
世の中には偶然がある。 その偶然は、そのとき何故か俺を選んだ。 ライオンが…あのサーカスを逃げ出した野生のライオンが、俺の近くにやってきたんだ。 信じられなかった。 だって野生のライオンなんて見たことがなかったから。
俺は驚いた。 どうしようかと思った。目の前のライオンを見て。 だけど決心した。 雄雄しいライオンに殺されるのも悪くはないけれど、それならばいっそ俺が雄雄しく殺してやろうと。
野生を制すことが俺に出来るのか? それは疑問だったけれど、俺はそれをやってみせた。 かのライオンは、その雄雄しき姿のまま俺の足元に横たわっていた。
…冷たくなって。
盲従。
それは俺に与えられた言葉であるかのように、俺の日常を支配していた。24時間、365日、いつ何時でも襲い来る狂おしいほどの感情。 俺は、かつてこういうのを見たことがある、感じたことがある、と思っていた。そしてそれが、いつだったか見たサーカスのライオンであることに、つい最近になってやっと気づいたんだ。 飼いならされたライオン。 まるで今の俺みたい。 …尤も、俺はあのライオンのように雄雄しくなんてなくて、寧ろその反対、逆なんだろうな。女々しい、と言う言葉はどこか違う気もするけど、言うなればそれに近い。 一番ぴたりとくるのは、やっぱり盲従という言葉だ。
俺は、盲従している。
自分の目で何かを見て、その視界の中の何がしかを認めるということそれ自体が、もう既に出来ないような気がするんだ。そう、俺の視界はいつも彼に決められていて、彼が見よと令したものだけが見えるようになっている。そんな感じだ。 でも、俺には分からない。 俺が盲従する彼は、一体何を求めているのか。 分からないから俺は考える。
何をしたら喜ぶ? 何をしたら笑う? 何をしたら幸せ?
ああ、考えるたびに俺は思うよ。 俺が、彼の中の幸せを導き出せるのならば、それはどんなにか素晴らしいことかと。 こうしていると気が紛れるんだと言って、彼はセックスを好んだ。 だから俺はそれに従うけれど、正直そろそろそれも飽きてきたと思ってる。 分かるだろう? セックスなんてやることは全部同じだ、行き着くところだって全部同じ。精子が噴出せばそれだけで一発KO、それまでの歯痒い快感は一瞬にしてモノクロの白けた感情と化してしまう。 俺は常々それを感じてた。 だから…そう、俺は俺なりに考えたんだ。どうすれば彼が幸せになるのか。セックスではない方法で。白けてしまわない方法で。 彼には内緒のプレゼントだから、俺はこっそりそれを実行する。下拵えは完璧だよ。だけど彼は気付かない。つまりこれは、マジックみたいなものなんだ。
3、2、1…
「クラウド、最近姿を見せないと思っていたら…一体どこに行っていた?」 「ごめん、セフィロス。でも、一昨日会ったばっかりだよ?」 「そうだったか?まあ何でも良い。ともかく一日一回は必ず顔を見せろ。分かったか?」 「うん、分かった。気をつけるよ」 「分かれば良いんだ」 彼はセフィロス、神羅の英雄の、あのセフィロスだ。 彼こそが、俺の盲従する相手。 セックスの相手でもあり、俺が幸せにしてあげようと思っている相手でもある。 俺はこんな些細な会話の中にも、俺の下拵えの成果を感じて歓喜する。
俺はセフィロスが大好き。 盲従する。 だから何でも出来る。
「クラウド…ほら、お前はコレが好きだろう?」 「はい」 セフィロスと二人きりの、狭く暗い部屋の中。俺は差し出された長い指を両手で包み、爪の先から指の付け根までをちゃぷちゃぷと舐め上げた。 俺は人差し指が好き。綺麗だから。 だけどセフィロスは、俺の穴に挿れるためにと、中指と薬指を指定する。だから結局いつも三つの指が唾液でどろどろになる。 それが俺の中を弄る頃、俺はセフィロスの性器を口いっぱいに咥えこんでいた。 69になって。 セフィロスの上に被さった俺は、視界いっぱいズームされた性器をしゃぶりまくって、充血し大きく膨れ上がったソレに喉をつかえそうになったりする。 セフィロスは俺の中にグリグリと指を押し込んでかき混ぜるだけで、すっかり勃起したアレにはまるで目もくれない。 すっかり感じている俺の体はぷっくりと押さえきれない精液の雫を覗かせているのに、やはりそれは無視される。 「あ…ああっ、んぁあっ!」 「どうした?」 クク、と聞こえる低い笑い声にビクン、と体が震えた。 ほら、これが飼いならされた動物の姿。 条件反射とでもいうのか、セフィロスの漏らす嘲笑に俺の体は敏感に反応する。 辱めを受ける快感。 淫姿を見せているという羞恥心に重なる、反道徳的快楽。 馬鹿馬鹿しいほどに本能的だ。 「ね、も…もう良い…良いよ、ね…?」 「お前が欲しいのならそうすれば良い」 ねっとりと絡みつくような囁き声でそう言われ、俺はずるりと下半身を引っ張る。そうして、俺の唾液でぬらりとしたセフィロスの下半身に、俺の下半身を宛がった。 全く動こうとしないセフィロスの上で、俺一人だけの踊りが始まる。 欲しいから、俺は自分の穴にセフィロスのを埋める。 ただそれだけの作業。 こういう時、まるでセフィロスのぴん、と勃起した性器はイケナイ玩具のような存在に見える。けれど、セフィロスの視界の中に映る俺はもっと滑稽なはずだった。だってそうだろう、俺はその玩具に縋って独りで激しく腰を振る哀れな動物なんだから。 溺れている。 盲従している。 俺は俺の意思で腰を振っているようにも思えるけれど、実際にはセフィロスに動かされているだけなんだ。知らず知らずの内にそう仕向けられている、そして俺はそれに従うだけ。 「はっ、はっ…あ、ああぁっ…!」 脳ミソが溶けそうになる。 俺はどうしようもない快楽の中で自ら強く深く激しく腰を振り、自らを手淫し、セフィロスに届くようにと至極陶酔して喘いだ。 全てはセフィロスの思いのまま。俺はそれに盲従する。それだけ。 「イ、イ…クっ…あっ、あっ…んんっ!!」 昇りつめる感覚に任せ、俺は達する。 そして、どっと押し寄せてくる、どうしようもない気持ちよさと疲労感。 暫くセフィロスが中に居るままじっとしていた俺は、やがて気だるくセフィロスの上から移動した。と、その瞬間に、俺の中からドロリと大量の白濁液が溢れ出し、俺の太ももをつうっと伝っていく。 俺の中に吐き出された愛すべき遺伝子。 但し、既に死滅した、ね。 「セフィロス、すごく気持ちよかった」 「そうか」 良かったな、と軽く笑うセフィロスの表情には、やはりどこか見下したような色が窺える。俺はセフィロスのそういうところが大好き。 無表情の中に、時々見える暖かい瞳。 それと同様に、時折見えるゾッとするほど冷たい瞳。 どっちも大好きだと思う。 「俺、飲み物淹れてくるよ」 「ああ」 俺は太ももを伝う精液をそのままに、裸体のままキッチンへと向った。俺の歩いたところに、ぽつぽつと精液の跡が零れ落ちる。
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