大好きな人がいるとね、優しくなれるんだ。
例えば俺は、
セフィロスがいるだけで博愛主義者になれるんだよ。
ねえ…
大好きなものも、
目指すものも、
少し気になってたものも、
俺は、大好きなセフィロスの為に全部捨てた。
"そんなものは必要ないだろう?"
セフィロスは、大切なものを捨てて自分を選べと言ったから、俺はセフィロスを選ぶためにそうしたんだ。
それは、とっても簡単なことだった。
今迄どんなに大切にしてたものだって目を瞑れば簡単に捨てられる。俺はセフィロスにそれを証明し、セフィロスは俺にこう言った。
"お前は薄情者だな。いとも簡単にそれを成し遂げるとは"
そう言って笑ったセフィロスを、俺はただ見ていた。見て、とても幸せだった。
だってそうだろう、セフィロスは俺のした事をこんなにも笑って誉めてくれるんだから。それは俺にとって極上の事で、他のどんなものを捨てても手に入れたかったもので、それを手にできたことは俺に「ああ、やっぱり捨ててよかった」という確信をさせた。
大切なものなんて一つで良い。
ううん、違うな。
大切なものは二つも手に入らないんだ。
だからたった一つの大切なものを手に入れる為には他のものなんて犠牲にして当り前なんだ。ほら、良く言うだろう。二兎を追うものは、って。
だから俺のした事は正しい、間違ってない。
セフィロスを手にいれる為に俺が全てを捨てたことは、とっても正しいことなんだ。
ねえ、そうでしょう―――――?
セフィロスを手に入れた俺。
それはつまり、今迄大切にしてたものへの執着を捨てることと一緒だ。
大切なものは頑なにでも守りたいと思う、そんなの当然。それが大切だから、それを責められれば激怒する、そんなの当然。
だから今の俺は、セフィロスを罵る馬鹿共を殺すのだって躊躇い無いよ。セフィロスが認めたこの俺を罵る馬鹿にだって容赦しないよ。
大切なものを罵る奴らになんて価値はないから。
「クラウド、どんな気分だ?」
目の前で繰り広げられる情景に、俺はただ黙っていた。
俺の眼の中に映っているのは、セフィロスと、それからどっかの知らない馬鹿な男。
男は、セフィロスに犯られてる。
俺はとってもとっても大切なセフィロスがその男を犯ってる光景を見ながら、セフィロスの質問に答えもせずに、ただ考えてた。
この景色は多分、俺にとってものすごく許せないものだ。何しろ俺の大切なセフィロスが馬鹿な男の為にそんな事をしなきゃならないんだから。
そんなのは許されない。
俺の大切なセフィロスがそんな労力まで提供しなきゃならないなんて、あっちゃいけない事だ。そんなのはセフィロスが可哀想だ。
俺はそう思って、博愛主義者になる。
セフィロスに挿れられたまま、幸せな顔してるそのままで、逝かせてあげる。
だって、セフィロスにとって大切なのが俺だって気付いたら馬鹿な男はそれなりに傷ついちゃうでしょう?
だから優しい俺は、そんな現実を見ないで済むように、ちゃあんと逝かせてあげるよ。
恍惚、達きそうな顔してるソイツの首をもぎ取って、ね?
「あっ…ぐうっああ!!」
「大丈夫。気持ち良いでしょう?」
ソイツは最高級の恍惚顔をする。
未だにセフィロスは腰を振り続けてるからソイツの身体はゆらんゆらん揺れてる。俺はその反対側からソイツの首をもぎ取ってやる。
ねえ、良かったね。
気持ち良いまま逝けて。
俺は優しい笑みを浮かべてソイツを見おろしてる、何しろ今の俺は博愛主義者。幸せなままで逝かせてあげようなんて、俺は余程親切だね。
セフィロスがこうして誰かに余分な労力を強要される度に俺は、優しい優しい博愛主義者になれるんだ。相手がどんなやつだってそれは変わらない。だから俺は博愛主義者。
「クラウド。お前は残酷だな」
セフィロスはやっと腰を鎮めると、俺に向かって優しい笑みを見せてそう言った。
だから俺は本当に心から嬉しくなった。
だってセフィロスは、そうして微笑んで、そうして誉めてくれるから。
その笑顔を見るたびに俺はどんどんと優しくなれるんだ。
俺にとってセフィロスがとってもとっても大切なもので、セフィロスにとって俺がとってもとっても大切なものなんだって確信するたび、どんどんどんどん優しくなれる。
最高の博愛主義者に、なれるんだよ。
ねえ、そうでしょう―――――?
ある日セフィロスは、大切な俺を抱いた。
俺はすっかり博愛主義者になっていたから、抱かれるその間もどうやって自分を幸せにしてあげようかって悩んでた。
「あっ、ああっ!はっ…!」
喘ぎ声を漏らしながらも、いつどうやって最高の幸せを手に入れようか悩んでた俺に、セフィロスはそっと微笑みかける。
「クラウド、お前はもう用済みなのだ。俺は他の物を手に入れたくなった、それはとても大切なものだ。 だからお前は犠牲にならねばならない」
そっと聞こえてきた声に、俺はすっかり上機嫌になる。
ああ、そうか。
俺は用済みで、犠牲になるんだ。
俺の脳ミソはすっかり博愛主義者だったから、とってもとっても大切なセフィロスをも幸せにしてあげなくちゃって考えてた。その為には俺が犠牲にならなきゃいけないわけだから…
――――――ああ、何だ。
すごく簡単なことじゃないか。
大切だった色んなものを簡単に捨てたように、今度は、今大切なものを全部捨てれば良いんだ。
そうすればセフィロスは幸せになれるし、セフィロスが幸せになれば俺も幸せ。
そう、だからね。
俺は俺を犠牲にしなきゃ、ね?
俺の幸せのため、セフィロスの幸せにため。
「幸せにしてあげるね、セフィロス」
俺はにっこりと笑う。
とってもとっても大切な人の幸せを手に入れる為に。
今俺が大切にしてるこの気持ちと命を犠牲にして、
セフィロスを幸せにしてあげるね。
セフィロスの幸せの証明と、俺の博愛の証明は、真っ赤な真っ赤な血。
それから薄れてく俺の意識。
とってもとっても大切なものを一つ手に入れるには、他のものなんて要らない。
他のものを犠牲にするなんて当然のことだ。
ねえ、そうでしょう―――――?
ねえ―――――…
ねえ…
ねえ…
END
…BACK…
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