口説きの道

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ナルシェのガード達から逃れ、ロックによってフィガロ城まで連れてこられたティナは、どうして周囲の人が自分に良くしてくれるのかが良く分からなかった。

しかしティナにとって更に訳が分からなかったのは、フィガロ国王だとかいうエドガーが言った意味不明な言葉である。

「どうして良くしてくれるの?」

そう聞いたティナにエドガーは言ったものだ。

「まずは君の美しさが心を捉えたからさ。第二に君の好みのタイプが気にかかる」

しかしティナは首を傾げただけだった。それに対しエドガーは、ちょっとしてから苦笑してこんな言葉を漏らした次第である。

「…私の口説きのテクニックも錆付いたかな」

しかしそれすらもティナには解析不能だったのはいうまでもない。

しかしエドガーにとっては、ちょっぴりだけ悲しいことだった。

 

そんな訳で。

 

ナルシェに戻ってもなんだなあ、などと思っていたロックは、その途中に何故かフィガロの衛兵にさらわれた。そして否応無く、某場所に連れて行かれたのだった。

その場所とは…サウスフィガロ。

エドガー統治下のこの土地に連れてこられた事といい、そうしたのがフィガロの衛兵だという事といい、これはエドガー絡みだな、と思っていたロックは連れてこられたバーなどで勝手に酒を頼んでいた。

「悪いな。あ、因みにツケで。え、俺じゃないぜ。エドガー様、エドガー様」

ロックは勝手にエドガーの名前を使ってツケにしていた…。

そうしてロックが数杯飲んで楽しくなっているところへ、すっとある影が現れた。

何だ?、そう思って見上げてみると、どうやらその姿はエドガーだった。何だ随分遅かったな、人をさらっておきながら、そう思っていたロックは何か言おうとして口を開けたが、その瞬間に固まった。

「今宵、月にも勝る君の瞳に乾杯」

そう言われ、チャリン、と勝手にグラスを響かされる。

――――――――というか。夜じゃないし。

いや、問題はそこではない。

「…何言ってんだあ?」

ロックは素っ頓狂な声を出した。エドガーは女性だったら年齢構わずに口説く。それは知っていたけど、何故に男の自分に?

とうとうヤバクなっちゃったのかな?

ロックはそう思ったが、エドガーは目をキラリ、とさせていて、とてもそれを突っ込めるカンジではない。

それどころかロックの隣の席を陣取ると、ズイ、と寄ってきて、ふっ、と笑った。

ゾクッ…

ロックは蒼褪めた。何だ、今の笑い!?

「素敵な君には可憐な花が似合う。いや、可憐な君、の間違いかな」

「え、エドガー…???」

やばいのと違うか?

格好良いと言われたことは残念ながらロックの過去にはないが、しかしだからって可憐とは言われたくない。っていうか、恐い。

「…トキメキとは不思議なものだな。いつ何時でもやってくる。例えばそう…今、此処にも」

ゾクッ…

「トキメかないんですけど」

「――――…トキメかないのか?」

「ああ、かなり」

「何故だ」

「だってエドガーにトキメキたくないって」

「…それはつまり相手が私だからトキメかないのか」

「そりゃそうだ」

「……そうか」

はあ…エドガーは大きな溜息をついて、ロックから身を離した。そして、手にしていたグラスにまで溜息を吐いて、それを一口飲む。

それを見て、何だ何だ、とロックは思った。今さっきティナを連れていったその時は真面目そのものだったというのに、このちょっとの間に何があったというのだろうか。

「どうしたんだよ、エドガー?」

取り合えずそう聞いてみると、エドガーはまたしても溜息を吐いてこう呟いた。

「口説きのテクが…」

「…は?」

「私の口説きテクニックはすっかり駄目になってしまったようだ」

「え。って、まさか…」

もしや自分を実験台にしてそんな事を!?それって意味無いし!!…そう思ったロックだったが、あんまりにもエドガーのオーラが切なかったので何も言えなくなってしまった。

そう――――――エドガーは、エドガー印の口説きテクニックの下落ぶりに、かなり落胆していた。

実はそれはさきほどのティナ口説きがどうもイマイチだったからというのが原因だったが、それはティナの方に問題があったというだけで、エドガーには問題はなかったわけだが、そんな事とは知りもしない人々が此処に二人。

「いや〜エドガー。それはな、きっとアレだ、アレ。歳だ」

「何だと。2歳しか違わないお前に歳だなんて言われたくないな」

「違うよ。年齢を考えて口説けって事だよ」

「何…じゃあ因みにお前は何歳までなら…」

「俺え?うーんと…俺はやっぱ…」

ヒソヒソ…

危険な話題をする男、此処にアリ。

店内をくまなく眺めつつ、あの辺りまでかな…などと言う。とすれば勿論、何だまだまだ甘いな、などと切り返す。

ところでロックは今まで口説くという事をしたことがなかった。だからあまりそういう事が良く分からない。

「俺、口説いたことないんだけど」

しかしこれはエドガーからしてみれば、

「お前の守りたい精神を口に出すと、それはもう口説きと一緒じゃないか」

というカンジであった。

「どういう意味だよ?」

「“守る!”…これは、女性にとっては口説きと一緒だ」

「何だと〜!俺は真面目にだな!」

「何をいう!私の口説きはいつも真面目だ!」

じゃあエドガー、何回結婚するんだよ、とロックは突っ込みたかったが、敢えてそれはやめておいた。

「ところでエドガー。どうしていきなりそんなこと言い出したんだよ」

大体エドガーの性格などを知る人なら、そういう言葉を聞いても、ふふふ、とか笑って終わってしまう。それはエドガーも承知のはずである。それがいきなりこんなふうに切ないオーラを漂わせるなんて。

「実はな…」

そこで、やっとティナの名前が出てきてロックは、ああなるほど、と唸る。

「実は俺も…」

ティナをフィガロ城に届けたロックも、その道すがらにティナに向かって、例の文句を言ったわけだが、何となくティナは訳が分からなそうな顔をしていたのだ。

……此処に同じ悲しみを持つ男、二人。

 

結果。

 

「リベンジ戦だ!」

そんな意気込みを見せた男二人の未来に、落胆があるのは言うまでもなかった…。

教訓、“相手は選ぶべし”。

 

 

 

その頃のティナはというと…。

「あれ。確か此処を通って…此処をきて…え??…わ、わからないわ…!」

――――――フィガロ城で迷子になっていた。

 

 

 

END

 

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