※この物語は、セフィ×クラ「ILLUMINATI」「星の螺旋」の続編的物語であります。(設定継承しております)
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LAST MISSION -------------------------------
大切な友達だった。 その男の名前はクラウド・ストライフ。 神羅カンパニーでかつて兵士として共に歩んだ、それは仲間だった。 彼とは同室で、狭苦しい部屋の中で良く語り合ったものだ。 初めて会った時は少しおどおどした男だなんて思っていたけれど、少し経ったらすっかり彼とも打ち解けた。 多分、親友だろうと思ってた。 クラウドが自分をどう思っていたかは分からないけれど、それでも自分は親友だとそう信じていた。何でも話せて、失敗だって堂々と言い合える、そんな仲だろうと。 けれど―――――――……。
それも今では、淡い青春時代の思い出でしか、ない。
「イリド!」 そう呼ばれて、イリドはその声の方向を振り返った。振り返った先には、仕事仲間である同年代の男が立っている。その男はドットという名前で、もうかれこれ2年ほどは一緒に仕事をしている間柄だ。 現在の仕事は、酒場の運び屋。これといって難しい仕事ではなく、どちらかというとそれは力仕事だった。だから特別頭を使わなくていいし、仲間は気さくな者ばかりだからこれというイザコザもない。つまり至って平和という具合だ。 「オーナーが呼んでるぜ、何だか難しそうな顔してさ。お前何かやらかした?」 そうドットがおどけて言うのに対し、イリドはカラッと笑って「アホ!」と返す。 「んな訳ないだろ。俺サボってないし」 「へー。何だろな、とにかく早く行って来いよ」 「ああ、うん。悪い」 そう返して今迄手にしていたラックを地に下ろすと、これからやろうとしていた作業の受け継ぎ事項を手短に話し、イリドはその場を去った。 小走りでオーナーの所に向かう。 一体何の用事だろうか。 オーナーは仕事に関しては厳しい側面もあるが、基本的には気さくでいい人だ。今迄仕事上で怒られることはあってもその他のことで叱られたことはないし、それどころか一緒に飲んだりしている仲である。 今回のように呼び出しをされるのは、大体の場合が仕事上でのミスだったりする。しかしイリドはそのようなことをした覚えはないし、これといって思い当たるふしはない。 だから余計に気になった。一体何の呼び出しなのかが。 オーナーの所に向かう間、イリドはそのことで頭がいっぱいだった。ミスはしていないけれど仕事のことだとしか考えられない、だからここ最近の仕事のことを考えたり、ここ最近の勤務態度を考えたり、そんなことが頭をグルグルと旋回している。 しかし、そんなイリドの心配はまったくの水の泡だった。
オーナーのところまで着くと、イリドは慎重にそのドアを押した。 「オーナー、イリドです」 そう声に出して名乗ると、ドアの向こうのオーナーは「おお、入れ」などと言ってイリドを招き入れる。それに従い奥まで入っていくと、部屋の端の方にあるソファに足などを組んで座っているオーナーの姿があった。 その側に立ち、イリドは無言でその顔を見つめる。 一体何の話があるのだろうか。 「イリド、今日は込み入った話なんでな。まずは座れよ」 「はい」 言われた通りにイリドは、オーナーと向かい合う形でソファに腰を下ろした。そのスプリングの利いたソファが、体重を沈めていく。 そうしたゆったりとした状況の中で、オーナーの“話”は始まった。 それは――――――イリドにとっては、忘れたくても忘れられない類の話だった。 「茶の一つもなくてスマンな。なるべく手短に済ます。…話というのはアレだ。ウチの仕事の話じゃない。それだけは先に言っておこうか」 「仕事の話じゃない…んですか」 何だ、やはり違うのか――――――そう思ってホッとする。つまりお叱りではないということだ。 しかし仕事の話でないとなると、今度はどういう話題なのかが全く想像つかず、返って気になってくる。個人的に呼び出されるとなれば他の仲間には関係の無い話となるだろう。 「イリド。お前確か…昔は神羅の人間だったよな?」 そう言われて、イリドの心音は早まった。 「は…い、そうですけど。でも、その、これといった事は知りません」 「ふふ。まあそう固くなるなよ。俺は別に神羅復建派でも神羅断絶派でも何でもないんだから」 「ああ…」 その言葉は聞いたことがある。 神羅が無くなった今、街は復興作業で手一杯の状態で完全復帰はまだまだといった感じである。神羅のあったミッドガルという土地は、今は殆ど荒地だった。腐ったピザと称された円盤状の機械都市が崩れた為に、地下に位置していたスラム街も粉々になってしまったのである。だから今はミッドガルに住む人はいない。ただ、復興作業 に尽力している有志団体がテントを張って日々作業をしているくらいの話である。 その復興作業を行っている有志団体というのは、神羅断絶派と言われる人々である。 神羅の治めてきたこの世界は、その権力の崩壊によってある後遺症を患った。 それがその勢力である。 一つは神羅断絶派と呼ばれる、神羅の手のついたものを総て消し去ろうという意向の団体。ミッドガルはその団体の手によって復興されているわけだが、その復興後には有志団体の手によって区画整理と住居整備がなされる予定らしい。元々がそういう土地だったこともあり、その土地に人々が戻ってくるかどうかが問題となっていると聞いている。 そしてもう一つの団体が、神羅復建派と呼ばれる団体である。 この団体は普段は息を潜めていると聞くが、世界の各所でそんな人間がいるという。大体その団体の核となっているのは、神羅社員であった人間、それから神羅と取引をしていた人間である。そういった人間達は、神羅の復建を考えているらしく、過去の遺産でしかなくなった神羅の情報やらを嗅ぎまわっている。神羅復建というのはあくまで“勢力や権威の復建”という意味であって、“神羅カンパニー”そのものを立て直そうというより、それに類似したものを起こそうという意味であった。 そういうのがあることは知っていたが、イリドはそのどちらでもなかった。 むしろ、そのものに関わりたくないと、そんなふうに思っていたのである。 イリドは新米ソルジャー3rdどまりで神羅を去ることとなったが、最後の最後は本当に馬鹿らしい状態としか言いようがなかった。 神羅の英雄セフィロスが姿を消し、神羅が反神羅組織という問題を抱えていたころ、どういうわけか同期の新米ソルジャーは全員強制帰宅という処分を受けたのである。 それがどういう意味かは、イリドには良く分からなかった。 ただその時期の神羅は今までに比べて何か大きな問題を抱えていて、それに対処するのに新米ソルジャーという中途半端な立場は役に立たないも同然だったのである。 ソルジャーであるからにはソルジャーとしての扱いをしなければならない。 けれど力量的にはまだ監視が必要なソルジャー達。 そんなふうに曖昧な立場だったことが、多分そういう処分に繋がったのではないかとそう思う。それは神羅からの命令であって、その命令を与えられたままに神羅は崩壊してしまった。つまりイリドなどのソルジャー達は神羅社員であるままに会社を失ったという具合である。 しかし、それにももう興味は無かった。 ただ、そういった過去の神羅時代を思い出すと、必ず付きまとう事はあった。 それは――――――――あの頃、親友だと思っていた同室の男。 クラウド・ストライフ。 その男のことを思い出すとどうしても胸が痛む。彼には、1年ほど前に一回だけ会ったことがあるが、それ以来はどうしているかも知らない。その時はある物を渡したくて必死に行方を探したが、その唯一の行為さえもしかしたら間違っていたかもしれないと少々の後悔を持っている。 昔―――――――神羅時代に。 神羅時代に、教官という存在がいた。その教官が、神羅の崩壊後にイリドの元を訪れ、そしてある物体を渡したのである。 “クラウド・ストライフに会ったら、これを渡してくれ” そう言われて渡されたのは一つのロケットだった。そのロケットはあくまでクラウド宛だったから、イリドはその中身が何であるかは知らない。 けれどそのロケットにはきっと、大きな意味があるだろうと思っていた。 もしかしたらクラウドにとって良くないことがあるのではないか、そうも思った。 けれど結局イリドはそれをクラウドに手渡す事にしたのである。 そういった過去を―――――――神羅という言葉は、思い出させるのだ。 「お前が元神羅であるということは、ある程度見込めるってことだ。あの組織ってのは狡猾だった…それに認められたってことは凄いことだ。これは嫌味じゃないぜ。事実だからな」 「……それで、本題は?」 そうイリドが低く言うとオーナーはふっと笑って、そうだな、などと言う。 そう、本題はまだこれからなのだろうから。
「――――――――神羅の破片が欲しいと、言われてる」
響いた声に、イリドは呼吸を止めた。 何を、一体何を言い出すのだろうか、この人は。 それはきっと先の神羅復建派のことだろうと思うが、そうだとすればこのオーナーは、自分をその団体に売ろうということになる。幾らなんでもそれは酷すぎる。 「悪い話じゃない。別に俺は奴らに加担しようなんざ思ってないさ。ただ神羅としての最後の仕事があるって話なんだ。それに参加できるのは神羅の破片…つまり元神羅の人間だけなんだと聞いてな。それで、お前を思い出した」 そう語るオーナーの顔は、とても嘘をついているようには見えない。多分、本当にそれだけの話なのだろう。イリドを売れば何か益があるとか、そういった話ではないらしい。 けれど、イリドは静かに首を横に振った。 「オーナー。…俺はもう神羅とは関わりたくないんだ」 あの頃は、あまりにも多くのことがあって。 あの頃は、あまりにも悩んで傷ついて。 もうそんなことはこりごりだと思うのだ。今の気さくな仲間達と共にあるほうが楽しいし、何より楽だ。もうあんな辛い時期などぶり返したくない。 ただでさえ、後悔のようなものが残っているのに――――――。 「そうか。お前がそう言うならそれで良いぜ。…まあとりあえず言っておこうか。今回の話は神羅復建派から来たもんでもない」 「え?」 「この話は極秘で回ってきたもんだ。最後の仕事は“祈り”らしいぜ」 「…祈り?」 何だそれは。 訳が分からない。 「まあ興味があるなら、明日此処に行ってみるんだな」 そう言うと、オーナーは一枚の紙をイリドに手渡した。 それは薄汚れたクラフト紙で、そこに書かれているのは地図のようだった。その紙をまじまじと見つめ、イリドは押し黙る。 地図を見るとどうやらそれはミッドガルであるらしい。しかしミッドガルの中でもまだ復興作業が進んでいない区域で、しかもそれは地下のようだ。神羅時代、その土地の地下に何かしらの手が入っているというのは聞いたことがあったが、イリドはその詳細までは知らなかった。 そうして黙ったまま紙を見つめるイリドを、オーナーは黙って見つめていた。
夜、思い返していた。 昼にオーナーに呼び出されそこで聞いた事、それから神羅時代のことを。 神羅にいた頃、それはとても楽しかった。 けれど今思い返してみるとそれはあまりにも辛くて切ない時期だったと思う。だからこそそこには返りたくない。あの頃には返りたくないのだ。 一番の後悔は、多分――――――クラウドにあるのだろう。 ベットに大の字になって寝そべり、渡された地図を見る。 「…祈り…って何だろ」 神羅の最後の仕事、確かそう言っていた。 しかし崩れ去った神羅が一体何をするというのだろう。最後の仕事など、崩れ去った今では何もないはずだ。これがもし神羅復興派の人間からの情報だとしたらそういうことも分からないでもないが、そうではないとオーナーは言っていた。 「今更…神羅なんて」 そう呟くが、頭を占拠するのはそればかりである。 記憶のどこかで――――――拘っていた何かが目を覚ます。 あの頃、自分は……とても。 とても、必死で。 前向きで、頑張って、必死で――――――――――――…生きていた。
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