「だからって何でコレなんだよ!」

「え〜面白いじゃん?良いだろ、これ!」

「良くないっ!」

三人からブーイングが出た今年の衣装は、ザックスの提案により…着ぐるみ。

一体何が悲しくて神羅のソルジャーが着ぐるみなんぞ着にゃならんのか。しかも揃いも揃って四人…それは写真屋のチョビヒゲオヤジも笑い出すわけである。

「いや〜良いねえ!ワシはいろんな被写体を撮ってきたもんだが、こんなもん撮るのは初めてだわい!」

「だろ!?さっすがオヤジ!話が分かるぜ」

ザックスは着ぐるみを着ながらすっかりオヤジと意気投合していたが、残された三人はげっそりしながら囁き合っていた。

「…あれ、絶対馬鹿にされてるんだと思う」

「…俺もそう思う」

「…ザックス、気づいてないよな」

チョコボとモーグリの着ぐるみを着た四人は、昨年よりかはラフな表情で写真に映し出された。まあ衣装が衣装なだけに緊張できないというのもあるが、二度目ということもあって多少肩から力が抜けていたのかもしれない。

向かって左から、エッサイ、セバスチャン、ザックス、カンセル。

去年と同じ並び。

エッサイとセバスチャンはモーグリの着ぐるみを、ザックスとカンセルはチョコボの着ぐるみを着用しているから、モーグリVSチョコボといった感じである。

そんな記念すべき二枚目の写真を撮った後、四人はそれぞれのフォトフレームにやはりその写真を収めた。去年の写真も収めておきたいから、去年の写真の前面に今年の写真を、というふうに重ねる。そのまま重ねてしまったらくっ付いて悪くなりそうだからと、それぞれ写真と写真の間に薄紙を挟んで綺麗に保管した。

エッサイとセバスチャンの部屋にはやはり同じ写真が二枚飾ってある。しかも今年は着ぐるみ写真が、である。

部屋の隅に、二枚目の写真。

着ぐるみを着た、少し慣れた感じのソルジャークラス3rd達。

 

 

 

そのまた翌年のことである。

四人はやはり約束とおりにミッドガルの写真屋で写真を撮った。

しかし今年はミッドガルの貸衣装屋には行かずに、いつも通りの格好…つまりソルジャー服で写真を撮ったのである。これもやはりザックスの提案だったのだが、ザックスの言い分によれば、やっぱり一枚は普段の格好も必要だ、ということだった。

このザックスの言い分には理由が存在している。

近く査定が入ることを知っていたザックスは…というより実際はカンセルから聞いて気づいたというだけなのだが、ソルジャークラス3rdでの活動評価が四人共に一定値を達していることを知り、数ヶ月先にはソルジャークラスが上がることを理解していたのだ。

そうなると、3rdのソルジャー服ともサヨナラである。

だから、3rd最後の記念という意味も含めて、ソルジャー服のままで撮ろうという提案をしたわけなのだ。この提案については、他の三人も大いに賛成だったものである。

ソルジャー服で向かった四人に対して、チョビヒゲオヤジは大層驚いた。

毎年必ず写真を撮りにくるものだからすっかり気の知れた存在になっていたオヤジだが、彼らがソルジャーだということはさっぱり知らなかったから、三年目にしてようやくその事実を知ったという具合。さすがに今年は、チョビヒゲオヤジの目にキランと職人魂が浮かんだものである。

「うんうん、良いね!実を言うとソルジャーってのを一回撮ってみたかったんだよ。戦う男の顔ってやつだね。はい、じゃあ撮りますよー」

パシャ!

写真に映し出されたのは、正真正銘のソルジャー四人。残念ながら1stとはいかなかったが、それでも誉れ高きソルジャーには変わりない。

三回目ということと、いつも通りの服ということで、四人はすっかりいつも通りの表情を見せていた。だから、チョビヒゲオヤジが期待していた戦う男というフォトイメージとは少し離れてしまったが、それでも元来のソルジャーという誇りのようなものが、その写真の中には焼き付いていた。

「何だか今年の写真、良いな」

セバスチャンがそう言い、エッサイもそうだな、と頷く。カンセルもその意見には同意だった。尤もザックスだけは「今年も、の間違えだろ!」とぶつぶつ言っていたが。

「来年は2ndの服で撮りたいよな。記念になるだろ」

「いえてるな。で、見事1stになった暁には、当然撮るよな」

「だな!」

最初は付き合いで始めた恒例写真だったけれど、エッサイもセバスチャンもいつの間にかそんな希望を口にしている。それを見て、ザックスはニヤニヤと笑っていた。そして、そんなザックスを見てカンセルが思わず噴出す。

表情も自然で、日常の一部を切り取ったかのような写真。それが記念すべき三枚目の写真。

四人はそれぞれのフォトフレームにその写真を入れ込んだ。これで三枚の写真が重なり、ぱらぱらとやると何だか少しだけ年輪を感じるような気がしたものである。

部屋の隅に、三枚目の写真。

3rd服を着た、いつも通りのソルジャークラス3rd達。

 

 

 

ソルジャークラス2ndに上がった四人は、以前より少し仕事が忙しくなった。

日常は相変わらずのんびりしているのだが、裏では数年前からずっと続いているウータイとの戦いが尚膠着状態であり、一部のソルジャー達はその戦争に借り出されている。

幸か不幸か、四人はウータイ戦争要因からは外れていた。

ザックスはこれにぶつぶつ不平を漏らしていたが、カンセルやエッサイ、セバスチャンは、大してそれを不満に思うことは無く、通常の任務をこなしている。

「おい、ザックス。知ってるか?反神羅組織ってのが暴れてるんだと。何でもデカイ組織らしいぜ」

「マジに!?じゃあ俺らも借り出されるんかな?」

「残念でした。その件は基本タークスが処理してるらしい」

「何だよ〜!折角俺の華麗な活躍を見せてやろうと思ったのにさ」

情報通のカンセルは、ザックスにいろいろな情報をもたらしていたが、ザックスにとってそれはどれも活躍場所に繋がるようなものではなかった。だからいつも悔しそうなコメントしか出てこない。というより、実際そこに出向くとなれば上から指示が出るのだから、カンセルの情報はあくまで情報でしかないのだが、ザックスにとってそれはリアルタイムな指示と同様の効果があったのだ。

「ウータイ戦争も反神羅組織も駄目か。これじゃ、ちっとも英雄になんかなれないぜ。どうする?」

「どうするって聞かれてもな。エッサイとセバスチャンみたいに運が良くないと」

「は?それどういう意味だよ?」

飛び上がるように身を起こしてそう聞いたザックスに、カンセルはとっておきの情報を口にしたものである。といってもそれはザックスを悔しがらせる情報に過ぎなかった。

「あの二人、反新羅組織の件で借り出されるらしいんだよな。一時間くらい前だったかな、任務令が出てた」

どこで入手したのだか、カンセルは最新の情報をすらりと口にする。一時間前といえばほんのさっきのことで、全体に対しての任務でなければ本人にしか通達されない任務令なのに、絶対に確実という裏づけがカンセルの中には出来ている。

「今頃準備中だろ。どうする、明日にはあいつらの英雄譚が出来上がってたら?」

「マジかよ!くっそ〜やられた!先越された!こんなのアリかよ、ああああぁぁ〜!!」

頭を抱えて最高に悔しがるザックスに、カンセルは思わずぶっと噴出す。

ザックスのように活躍の場を求めている2ndは少なくない。特に査定で上手い評価を叩き出せなかった万年2nd達はその傾向が顕著で、だから2ndというのはやけに競争意識が高いのだ。勿論、それは一部の人間に限ってのことだが。

「ま、気長に待てば?いつかザックスにもチャンスが来るって」

「本当か〜!?」

未だ恨めしそうな顔をしているザックスに、カンセルはやはり笑ってしまったものである。

しかし、そうして笑っていられるのもその時だけだった。

その翌日には、ザックスにも同じ任務令が下ったのである。

それはザックスにとって飛び上がるほど嬉しいものだったが、しかしそれは喜んで終われるだけの任務ではなかったのだ。任務結果さえ良ければ昇進は近くなる、しかし任務結果が良くても嬉しくないケースも存在している。その事実にザックスは正に直面したのだ。しかも――――自分の目の前で。

セバスチャンとエッサイの殉職が社内で報じられたのはそれからすぐのことだった。

 

 

 

その年のこと、ザックスとカンセルは写真を撮った。

いつものようにミッドガルの写真屋で写真を撮った。

昨年エッサイとセバスチャンが希望していたように、2ndのソルジャー服を着て写真を撮った。その服を着て撮りたがっていた肝心の二人は、その写真の中にはいなかった。

「オヤジ、写真の左側は二人分空けといてな」

ザックスの要望に、チョビヒゲオヤジは首を傾げる。

「あの二人はどうしたんだね?」

「うん、ちょっとな。――遠征中なんだ」

「そうかい。大変だな」

パシャ!

出来上がったのは、左側が二人分空いたバランスの悪い写真だった。チョビヒゲオヤジはそれを見て、これじゃバランスが悪いな、などと愚痴ていたが、ザックスとカンセルはそれで構わないと笑ったものである。

「遠征から帰ってきたら、またあの二人も撮ってやるよ」

オヤジが親切心から言ってくれたその言葉が、二人の胸に痛く響く。

遠征なんて嘘だし、あの二人はもう二度と帰ってこない。念願の2nd服を着て写真を撮ることもないし、大きな夢だった1stの服などは永遠に着ることがない。

しかしザックスは、大きく頷いてこう言った。

「ああ、そうしてくれよ!そしたらさ、俺はこの写真に切り貼りする!そしたら四人だもんな」

「ははは、そりゃ妙案だ」

「だろ!?」

ザックスの笑顔の隣で、カンセルはいまいち笑えないまま出来上がった写真を見つめていたものである。そこに映し出されていたのは、ラフではいられない、どこか悲しそうな顔をした二人の姿だった。

ザックスとカンセルは、それぞれのフォトフレームにその写真を重ねた。去年撮った四人の写真の上に二人きりの写真を重ねてしまうことはどこか悲しく感じられて嫌だったけれど、時間は止まってくれることなどなく、一年前の笑顔は薄れていく。

部屋の隅に、四枚目の写真。

誰かの念願だった2nd服を着た、悲しそうなソルジャークラス2nd達。

 

 

 

ザックスとカンセルは、エッサイとセバスチャンの墓参りをした。写真の中から消えてしまった二人が静かに眠るその場所はどこか寂しくて、このままでは二人も寂しいだろうからといって、ザックスとカンセルは 定期的に墓参りに行こうと約束する。

「俺、墓参りなんて味気ない言い方は嫌だ!だから、“会いにくる”!俺、また会いに来るからな」

ザックスは墓石に向かってそう言って笑った。

カンセルもそれには同意だったが、その反面、それが更に自分たちを寂しくさせるだろうということがうっすらと分かっていたものである。しかし、それは口に出さなかった。

そんな悲しみを身に受けながらも、時間はどんどんと過ぎていく。

ザックスとカンセルは、いつも通りの日常を過ごしながらも2ndの仕事をこなしていた。その仕事というのはやはり大きなものではなく、ザックスが悔しがるような些細なものでしかない。しかしそういった平穏無事な日常が大切だということも、なんとなく二人の心の中には根付いていたのかもしれない。何しろ大きな舞台ができれば、それは大きな犠牲を伴うかもしれないのだから。

そんな中、ザックスは1stのソルジャーと繋がりを持つようになっていった。それはほんの些細な任務の一端に過ぎなかったのだが、ザックスの性格からなのか、その繋がりは段々と太い綱のような繋がりへと変貌していく。

アンジールという1stのソルジャーに訓練をつけてもらえるようになったことは、ザックスにとって大きな変化であり、そしてカンセルにとっても少なからず変化に違いなかった。

ザックスは段々とアンジールと訓練を積む時間を増やしていき、その代わり、カンセルと話す時間は少しづつだが減っていったものである。しかし長年の付き合いだし、お互い仕事もそれなりにやっていたから、カンセルはさしてそれを気にしてはいなかった。ただ気になるのは、そうして1stと繋がることでザックスが昇進し、夢の1stに上がった場合、ザックスの身が危険に晒されやしまいか、という部分である。

兵士なんてものは、いつだって死と隣り合わせに違いない。

それは十分分かっているのだが、それがいざ近くに降りかかると、その重みを感じずにはいられなかった。そして、これから起こるかもしれないことを案じないわけにはいかなかったのである。

「ザックス。お前、気をつけろよ」

カンセルは良くそんなことを口にするようになっていた。

ザックスはそんなカンセルの心情を知ってか知らないでか、笑ってこんなふうに答える。

「大〜丈夫だって!だって約束だろ。今年だってちゃんと写真撮るんだ。だろ?」

「ああ、勿論。絶対だからな」

「ははは!カンセル、いっちゃん最初は嫌がってたくせに今じゃすっかり俺の罠に落ちたな〜!」

「うるさいな!」

五年前、ザックスが言い出した写真を撮ろうという計画。

それはほんの些細な理由で、長方形の額縁をフォトフレームにしようという、たったそれだけのものだった。全く意味などない、ただのジョークのような始まりだったのである。

それなのに、今ではこんなに意味を持っている。

それを撮ることが一つの意義にさえなっているような気がするのだ。

「これからも沢山写真撮ってさ、フォトフレームが閉まらないくらいにしような!」

「そうだな」

そう言い合って、ゲンコツで挨拶をする。

約束をする。

時にはエッサイとセバスチャンに“会いに行き”、時には馬鹿話をする。そして新しい情報が入ればカンセルがザックスにそのネタを提供する。

任務に行き、訓練をして、日々が過ぎて――――。

 

 

 

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